ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

国連の能力不足はある程度受容されなければならない。この点を補うためには、各国の軍隊との相互補完的な活動が不可欠である。3.2.国連国際防災戦略:平時の取り組み次に、平時の取り組みとして、ISDRがある。ISDRは2000年に国連総会によって設立された。その目的は、「自然災害やそれに関連する事故災害および環境上の現象から生じた人的、社会的、経済的、環境的損失を減少させるための活動にグローバルな枠組みを与える」ことであり、また「防災の重要性に対する認識を高めることで、災害からの回復力を十分に備えたコミュニティーを作る」ことである21。ISDRは年2回、国連機関やその他の国際機関など25の組織から成るフォーラムを開催している。国際的なフォーラムの主な成果として、2005年の「兵庫行動枠組(Hyogo Framework for Action:以下HFA)」の策定が挙げられる。HFAは「1.持続可能な開発の取り組みに減災の観点をより効果的に取り入れる2.全てのレベル、特に、コミュニティレベルで防災体制を整備し、防災力を向上する3.緊急対応や復旧・復興段階においてリスク軽減の手法を体系的に取り入れる22」という戦略目標を打ち立てた。また昨年には「世界防災白書(Global Assessment Report on Disaster Risk Reduction: Revealing Risk, RedefiningDevelopment)」を作成した。その中で原子力発電所における事故など「複合災害」に対する脆弱性を指摘した。ISDRは、様々な側面を持つ「自然災害」の概念構築においても貢献しているのである。このようにISDRは、フォーラム(場)としては価値ある取り組みである。しかしながら、そのフォーラムとしての性質上、決定的に実効性を欠く。提案された目標やロードマップを実行に移すには、そのための「推進力」が求められる。次節でも述べるように、安全保障の「主体」の中心は未だ国家である。ISDRがその「推進力」たりえるか、という点は大いに疑問である。98221 ISDRWebページ(最終アクセス: 2012年3月30日)。URL:http://www.adrc.asia/ISDR/index.html22 ISDRWebページ(最終アクセス: 2012年3月30日)。URL:http://www.adrc.asia/ISDR/pdf/ISDR_Leaflet.pdf