ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

第28回佳作チームの管理や、人道分野を代表して現地政府やその他のアクターとの交渉を行うなど、多様な任務を負う。第三の「調整」の側面は、人道危機に備えるための早期警戒や非常事態対応策の策定、危機における共同ニーズアセスメントを組織することである。また、支援活動中、諸機関に共通のサービス(情報の提供や、軍隊の兵站能力を人道支援に活用するための「サービス・モジュール」というツールの提供など)の提供も担う。すなわち現場レベルの活動の円滑化に必要な措置を、予め取っておくことが重要であると言える。特に自然災害が発生した場合は、OCHA管轄下の国連災害評価調整(UN DisasterAssessment and Coordination: UNDAC)チームが災害発生後数時間以内に各国政府または国連機関から推薦された専門家を現地に派遣し、ニーズアセスメントを行う17。2004年のスマトラ沖地震・津波災害に対する支援においては、OCHAは被災地に100人以上の職員を派遣し、各種調整活動および定期レポート・復旧計画を作成した。さらにインドネシアとスリランカに人道情報センター(Humanitarian Information Centers: HICs)を設立し、情報を集約・発信した18。しかしこの際OCHAなどの国連機関は、同時にいくつかの問題にも直面した。第一に、人員の不足が挙げられる。OCHAは100人以上の職員を被災地に派遣したと報告したが、実際はウタパオに3名、バンダアチェに2名、バンコク、メダン、ムラボー、ジャカルタにそれぞれ1名が配置されたのみであり、その派遣も遅かったという19。第二に、支援の初期段階においては、組織的な活動が行われていなかったことである。また、未曾有の惨事による混乱から、支援国の支援のニーズに適合できなかった。第三に、国連独自の輸送能力が十分でなかったことである。援助物資の輸送・投下に必要なヘリコプターやトラックが不足しており、支援を円滑に実行できなかったという20。以上のように、国連による災害支援は概ね十分な制度を備えているが、いくつかの困難をはらんでいる。しかし、第一、第二の問題については、国連自体の取り組みによって改善できるだろう。第三の問題に関しては、やはり(後述するように)各国の軍と比較して、17中満(2008)45-47頁。18今村(2007)32頁。19今村(2007)34頁。20今村(2007)34-35頁。981