ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

3.国連の活動本節では、国連の自然災害に対する活動を簡潔に挙げた上でその特徴や問題点を指摘し、次節の議論への橋渡しをする。複数の国連機関が災害を予防、対処する活動を行っている。例えば国連食糧計画(World Food Programme: WFP)は食糧支援や兵站分野において物資供給を行うし、UNDPも復興・開発のための計画作成を担当する14。それぞれが非常に重要な取り組みをするが、簡潔な議論を行うため、ここでは特に重要な機関として、国連人道問題調整室(Office for Coordination of Humanitarian Affairs:以下OCHA)と、国連国際防災戦略(International Strategy for Disaster Reduction:以下ISDR)を取り上げる。3.1.国連人道問題調整室:災害支援の局面国連において、紛争や自然災害による人道危機に対処する際に主要な役割を果たすのがOCHAである。OCHAは、人道支援分野において政策原則やガイドラインを起案し、災害発生時には全般的な活動調整を行う。中満(2008)によると、災害に備えるために、また災害発生時に行う「調整」には、いくつかのレベルがあるという15。第一は、グローバルなレベルにおいて、複数の活動領域をどの機関が主導するのか、という責任分担を明確にすることである。いくつかの機関の間で、災害救援時に活動の重複があってはならない。円滑な支援活動を行うために、OCHAはそれぞれの活動分野を「クラスター」と呼ばれる領域に分類している。人道支援活動の11の領域に、国連内の主導機関を予め定めておくことによって、危機が発生した場合もスムーズな対応を可能にするというわけである16。第二の「調整」のタイプは、危機の現場レベルにおける、実際の活動の調整である。オペレーションに際しては人道問題調整官(Humanitarian Coordinator:以下HC)が任命される。このHCは現場における活動調整の責任者であり、危機に対処するカントリー・98014 2004年のスマトラ沖地震・津波災害復興支援に際しては、他にも国際労働期間(ILO)、国際移住機関(IOM)、国連合同兵站センター(UNJLC)、国連食糧農業機関(FAO)世界保健機関(WHO)、国連児童基金(UNICEF)、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)が各分野で支援を行った。今村(2007)31-34頁。15中満(2008)45-50頁。16 11の活動領域とは、それぞれ農業(FAO)、キャンプコーディネーション・管理(UNHCR/IOM)、早期復興(UNDP)、教育(UNICEF)、緊急シェルター(UNHCR)、緊急時の通信(OCHA/UNICEF/WFP)、保健(WHO)、ロジスティック(WFP)、栄養(UNICEF)、保護(UNHCR/OHCHR/UNICEF)、給水・下水・衛生(UNICEF)である。なお、括弧内は担当機関を示す。中満(2008)49頁。