ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

脅威としての自然災害と人間の安全保障「調整役」の役割を越えて第28回佳作澤田寛人1.はじめに果たして、自然災害による被害は、いつの世も不変であろうか。21世紀に生きる我々はこの問いに対して、直ちに否、と答えなければならない。今次大震災はそれを明確に示した。短期的には自然災害が複合的な災害に直結したことが観察されるし、中・長期的にその被害は、より緊密さを増している、地球規模の経済の鎖を断ち切ってしまう。現代において、我々が直面する自然災害のリスクは、(残念ながら)より大きくなっていると捉える必要がある。本稿は、この自然災害という人類すべてが直面する脅威に、普遍的な組織である国連がいかに対応し、その体制を整えるべきかを問うものである。この問いに答えるため、以下の作業が求められる。第一に、「自然災害」を、そもそもどのような枠組みをもって捉えるべきかを検討しなければならない。ここでは、国連が提起する「人間の安全保障(HumanSecurity)」の概念を適用する。第二に、国連の自然災害への取り組みを概観し、その特徴と問題点を指摘する。第三に、前の二節の議論から、国連に求められる役割を導出する。その際、安全保障論における「脅威のスペクトラム」から示唆を得る。2.人間の安全保障と自然災害本節は、自然災害の被害を効果的に制御するために、いかなる概念あるいはイメージをもって「自然災害」を捉えるべきかを問うものである。問題に対して、明瞭かつ正確なイメージを与えることは、それに対処する上での指針を提供する。それゆえ、本稿で議論する自然災害という問題に対処するためには、「自然災害」それ自体の輪郭を、正しく捉え975