ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

第28回佳作第五に、国連が主管となって国際災害救助諮問グループ(INSARAG)のガイドラインに原子力災害に遭った被災国において国際捜索救助チームと災害搜索犬を展開する場合、捜索可能地域の判断基準を盛り込むことを提言する。人間同様に、災害搜索犬の身の安全の確保、被爆の有無を確認する必要がある。原子力災害以外にも、様々な臭いが立ち込める現場に災害搜索犬を派遣し、遺体捜索に従事させた場合の嗅覚喪失といったダメージも同様に考慮に入れる必要があるだろう。以上、国際捜索救助チームと災害搜索犬の課題解決のための十の提言を列挙したが、その成否は、日本が、国際災害救助諮問グループ(INSARAG)の規則や国際基準を国内の規範や基準として普及させるか否かにかかっていると言えよう。また、国際災害救助諮問グループ(INSARAG)のガイドラインに強制力を持たせるためには、国連にリーダーシップを発揮してもらう必要があると言えよう。おわりに阪神・淡路大震災の教訓を踏まえて、日本は、東日本大震災において検閲手続きなしで災害搜索犬を受け入るといった手続き上の簡略化を行ったが、根本的な見直しには至っておらず、重要な課題は依然として未解決であった。日本が抱える課題とは、人的被害に関する確定数発表方式、生存者と遺体の両方に用いる捜索救助(Search and Rescue)の概念、日本独自の捜索救助の概念ゆえに遅延した復興宣言等が、国際社会に混乱と誤解をもたらし、国際捜索救助チームや災害搜索犬の支援が十分に活かされなかったことである。「ご遺体を生存者同様に扱う22」(北沢俊美元防衛大臣)といった発言に見られるように、日本人は、遺体に対しても生存者と同様に敬意の念を持って接するという文化を持っているため、捜索救助(Search and Rescue)の概念を変えることは困難かもしれないが、災害対策関連の概念の国際標準化を急がなければならない。そのためには、海外からの人的・物的支援の受入れに関する唯一の国際規範である国際22 2012年3月9日にフジテレビが放映した「自衛隊だけが撮った0311~そこにある命を救いたい~」より北沢俊美防衛大臣の発言を引用。971