ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

さらに、西川智氏の事例11から教訓を導き出すと、1マスコミの圧力により国際救助チームと災害搜索犬の有効性を確認できないまま、受入れを判断せざるを得ない状況になったこと、2人的被害に関する日本と諸外国の発表方法(日本は、遺体が確認されてはじめて死者数としてカウントした後、発表する、いわゆる確定数発表の方式を取るが、諸外国は、災害規模を援助国に提示し、援助を請うという観点から死者の概数を推測値として発表した後、実際の死者数を訂正する方法を取る。諸外国の発表方式が国際的に通用する方式である。)の相違が、海外のマスコミや視聴者に大きな誤解を与えたこと、2諸外国と日本との災害搜索犬の運用の仕方に相違があったこと、3被災地側は、地元の指揮命令系統に即座に入れる国内の警察・消防のチーム、災害搜索犬を求めていたこと等を挙げて、国際捜索救助チームと日本側との間に支援をめぐる認識の相違があったことを指摘している。日本と欧米諸国にみられる住宅、災害搜索犬の訓練方法、災害の種類(木造密集市街地における家屋倒壊、火災)、言語、国際救助に関する一般概念(人的被害の発表方法等)の相違に鑑みると、国際捜索救助チームが、衣食住の生活基盤は無論のこと通訳等の人的基盤においても自己完結性を持ち、日本の警察、消防と一体化して協力し合うためには、相互理解と調整力が必要である。ただし、河田恵昭氏は、「海外からの応援部隊の受入れに伴うあらゆる事項を被災自治体に準備させることは、基本的にはやめるべきである。むしろ肩代わりできる組織を新たに用意すべきである12」と述べているように、国際緊急援助チーム受入れのための組織を平素から設けておく必要があるだろう。ⅲ災害搜索犬受入れの事例元国際連合人道問題局災害救助調査部専門官西川智氏によると、被災地側には、諸外国からこのような申出があると想定していなかったし、国際捜索救助チームを積極的に受け入れたいという希望はなかったが、スイス及びフランスが国際捜索救助チームの派遣を申し入れていることが報道されたこともあって、日本政府はこれらの二カ国の国際捜索救助チームを「日本にない救助犬という技術を有している」という理由で受け入れることとした。96411西川「国際救助活動のミスマッチ」265?266頁。12 河田恵昭「海外からの応援部隊の受入れの課題とあり方≪防災体制≫」兵庫県・震災対策国際総合検証会議、2008年8月、258頁。