ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

第28回佳作大規模災害において国際連合は真に必要な支援を提供できるのか?―阪神・淡路大震災と東日本大震災を事例とした国際搜索救助チームと災害搜索犬の有効性に関する観点から―佐藤智美1災害搜索犬の運用と有効性(1)欧米諸国の運用欧米諸国において災害搜索犬が導入されるようになった歴史は古い。そもそも災害搜索犬とは、スイス等の山岳豪雪地域を中心に雪崩等の下敷きになった生存者を空気中の臭いを手掛かりに捜索するために訓練されたものであるが、欧米諸国では、その役割が拡大され、欧米特有の都市型災害においても災害搜索犬を導入するようになった。コンクリートや石造りの建物が多い欧米諸国では、地震によって家屋が倒壊することは稀であるため、災害搜索犬は、生存確率の高い72時間以内に建物の隙間等の一定の空間に取り残された生存者を捜索するよう訓練されている。(2)日本の災害搜索犬の運用他方、日本では、防災地域に指定されている場所であっても、いまだに免震機能が施されていない木造家屋が密集している地域が多いといった例や、これまで度重なる津波の被害に遭い、一時的に高台へ居住地域を移した地域であっても、利便性や生活基盤を求めて、沿岸部に街並みが再現されるといった例が多い。木造家屋の全壊と火災を伴った都市型地震であった阪神・淡路大震災、9割以上の沿岸部の住民が大規模な津波によって瞬時に圧迫死、窒息死した東日本大震災が、その典型的な事例である。日本では、災害搜索犬が消防や自治体等の公的機関に予め導入されているわけではなく、民間非営利団体(NPO)法人や個人が、自治体や消防の要請を受けて、ボランティアで捜索活動に参加しているほか、場合によっては、災害救助の訓練を受けていない警察犬や警備犬の出動が要請される961