ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

ユーゴについて、その悲惨さに目を向け、紛争被害への想像力を抱かせるために、日本の草の根において緒方氏が果たしてきた貢献は極めて大きい。トラック1.5やトラック2では存在感の薄い日本のNGOも、トラック3においては着実にその成果を上げつつあると言えるだろう。まとめ:紛争解決におけるNGOの活動の評価と限界NGOの紛争解決活動は直接的な調停や協議、エリート層を対象にした対話などのトップダウンの手法から、草の根における支援というボトムアップの手法まで、極めて広範に亘っている。NGOは、その活動の柔軟性や迅速性という強みから、トラック1.5においては、国家が介入し難い内戦に対して直接的な調停活動を行っており、これはアハティサーリ氏が2008年のノーベル平和賞に選ばれたことから加速しているように思われる。また、トラック2やトラック3で見られるように、紛争が大衆化している状況だからこそ、エリート層や草の根の一般民衆を、紛争の主体から、平和構築の主体へと転換させることができれば、持続的な平和をもたらすことに貢献できるだろう。これまで実績を積み重ねてきたNGOであるが、課題が無いわけではない。紛争の烈度が高いタイミングにおいては、強制力を持たず安全確保に不安のあるNGOが活動できる余地は限られている。また、人材・資金に制約のあるNGOは、ドナーの意見によって政治的な制約を受ける可能性はゼロでは無いし、より実務的には、資金が限られているために、活動の時限的制約もある。また、アカウンタビリティに欠けるなど組織的な能力の欠如も課題であろう。こうした限界に対して、紛争解決行動の先進国と言えるヨーロッパではNGOを評価するメカニズム整備の動きが既に進んでいる。例えばCMIは複数の紛争解決活動を行うヨーロッパのNGOと連携して、「IfP(The Initiative for Peacebuilding)」というコンソーシアムを形成しており、IfPにはEUもドナーとして参画している。IfPはEUへのアカウンタビリティを果たす一環として独自の活動報告や評価レポートを作成している8。「和8888 See. Antje Herrberg and Heidi Kumpulainen, The Private Diplomacy Survey 2008: Mapping of 14 Private DiplomacyActors in Europe and America, Initiative for Peacebuilding, 2008.