ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

第27回優秀賞教育、農業など経済活動への支援を行うという風に、伝統的ないわゆるNGOの活動も、拡大してきている。トラック3においては、日本のNGOも積極的に活動している。日本で紛争解決を明確に目標として活動を続けてきたNGOとして「日本紛争予防センター(JCCP)」が挙げられる。JCCPは1999年に設立された日本予防外交センターを母体としており、設立当初は明石康氏が会長であったことからスリランカやカンボジアで小銃火器回収などの活動を行っていた。2001年からJCCPへと組織改編され、武力紛争の被害を受けた草の根の人々を対象に、コミュニティの復興、被災者のケア、失われた教育・雇用・産業等の機会の確保、治安改善のための事業などを行っている。その他に日本国内・国外において、平和構築の実務家(軍、警察、文民)の育成や、啓発活動、調査研究、政策提言なども行っていることは、トラック3としての活動の幅広さを示している。また、1979年にインドシナ難民を支援するために相馬雪香が設立した「難民を助ける会(AAR Japan)」も日本の難民支援組織では老舗である。難民を助ける会の活動は難民保護に留まらず、旧ユーゴスラヴィアやチェチェンなど紛争後の緊急人道支援にも従事しており、最近はスマトラ沖津波や2010年に発生したハイチ大地震後の緊急支援にも迅速に展開しており、脆弱国家における支援活動で顕著な実績を残してきている。また、長有紀枝理事長を中心に地雷撤廃活動に参加したことも知られており、1997年に同会は地雷禁止国際キャンペーン(ICBL)のメンバーとしてノーベル平和賞を共同受賞している。日本における紛争への関心の高まりは、ヴェトナム戦争への反戦運動が底流にあるものの、実務的には、阪神大震災におけるボランティア意識の高まり、そしてUNTACにおける自衛隊や警察の活躍が大きな契機になったようである。例えばJCCP事務局長の瀬谷ルミ子氏やピースウィンズ・ジャパンの大西健丞氏などブラッドフォード大学に留学した人々が、国際NGOや国連での活動を経て、日本に根を張ったNGOを展開してきている。加えて、国連難民高等弁務官として名を馳せた緒方貞子氏の活躍が日本の開発援助業界を活性化させたのも間違いない。日本にとっては遠い国の出来事であるクルドやルワンダ、887