ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

第27回優秀賞官と直接交渉されたと言われている。彼らはそれぞれに違った役割をもって返還交渉に臨んだ。交渉の矢面に立ったのは東郷北米局長であり、「核抜き・本土並み」を実現させるための条件折衝に加え、コミュニケの文言折衝などに奔走した。しかし、非核三原則を掲げた佐藤首相と沖縄の米軍基地を極東の戦略的な要衝と考えるアメリカ側との意見の相違は大きく、こうした政治的な課題については若泉がキッシンジャーと交渉に臨み、大統領近辺の動向を非公式に探るとともに、有事の核持込についても踏み込んだ交渉を行ったとされている。現代の紛争解決においても、こうした重層的な交渉努力が不可欠になっている。紛争解決においてはアメリカなど大国による和平調停や、多国籍軍による武力行使が注目されがちである。たしかにイスラエル・パレスチナ戦争やアフガニスタン、イラクなどを考えてみても、こうした「トラック1」の和平調停は真っ先にメディアに取り上げられてきた。ところが、従来型の国家による和平調停では、仲介国の国益が反映されざるを得ないため、紛争当事国に不満が残ることがしばしばあった。イスラエル・パレスチナ戦争が未だに止む気配が無いのは、アメリカやアラブ諸国の存在を抜きにしては考えられない。しかも、冷戦後の紛争は国家間戦争よりも、国家内でのアイデンティティをめぐる紛争が主なものになっており、これまでの伝統的な国家による調停では、国家内の勢力にまで影響力を及ぼすことが難しくなってしまった。たとえばスリランカ内戦では2002年に北欧諸国が政府側と反政府武装勢力LTTEとの和平調停に乗り出したが、EUがLTTEをテロ組織に指定してしまったため、LTTEから調停者として不適という烙印を押され、北欧諸国でEUに加盟していないノルウェーとアイスランドだけしか調停に参加できなかった。こうした冷戦後の国際紛争をめぐる環境変化において、非政府組織(NGO)が紛争解決において主要な役割を果たすようになってきている。日本ではなかなか馴染みが薄いが、紛争解決に関わるNGOは世界で既に36,000を超えていると言われており、紛争国で草の根活動を行っているローカルNGOも含めると、数えきれないほどのNGOが既に活躍している。しかも紛争解決に関わる有力な国際NGOにおいては修士号や博士号を取得した879