ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

せず、両当事者の個人的な見解や関心について、NGOが仲介しながら一緒に共有し、対立の素地を把握することが狙いとされる。ここでNGOは公平なファシリテーターとして活動することで紛争当事者間における紛争解決に向けた対話を進め、両者の現状分析を補佐することで、相手への敵意を鎮めようとする役割を果たす。協議を経て、紛争解決に向けたアイデアを紛争当事者が一緒になって検討し、解決への一歩を踏み出させることがゴールとなる。トラック2のNGOとして、MRA(道徳的再武装運動)とKSG(シミール・スタディ・グループ)の活動を取り上げる。そしてトラック3とは、草の根における介入である。ここで行われる介入は、いわゆるNGOの紛争解決活動として最も一般的なものである。内戦で草の根の人々が紛争の当事者(被害者)になっている現状において、彼らに対する活動が、紛争解決活動の裾野で1990年代以降、急速に発展してきた。そこで行われる事例は多岐に亘っており、兵士の社会復帰や、紛争のトラウマに対する心理療法、加害者と被害者の両者が一緒に働いたり、教育を受けたり、スポーツイベントを開催するといったコミュニティビルディング、平和教育などが一例である。ここでは特に日本のNGOを取り上げてみたい。具体的には日本紛争予防センターや難民を助ける会などの活動を考察対象とする。最後に、こうした紛争解決におけるNGOの重層的な活動を概括した上で、これらの課題を指摘するとともに、対策についても検討を加える。876