ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

第27回最優秀賞ク・グローバリゼーション」の空間である。世界情報社会サミットでは、サイバー公共空間でのeガバナンスをどのように構築するかが1つの焦点となった。サイバー空間における仮想市民社会の存在は空想的というよりも仮想的な現実であり、われわれはその認知を迫られている。NGO活動によって構築されようとしている地球市民社会は、これら多岐にわたる市民社会像にまたがるものである。個人主義に基づくリーダーシップ/オーナーシップと共同体主義的なパートナーシップとは、矛盾する概念として考えられていたために、現場での課題がないわけではない。だが、NGOや市民社会のリーダーシップによって、個と全体をつなぐネットワークや、官民パートナーシップによる新しい公共という従来の二分法を超えた地球市民社会が作られつつある。6-3迅速性と持続性をめぐる時間のガバナンスグローバル・ガバナンスを地球的課題群に取り組む多様な主体による協調的な利害調整「過程」と捉えるならば、時間軸をめぐるガバナンスも重要となる。問題解決に向けた、あるいは目標達成に向けた時間的対処については、短期的に迅速性や即効性に焦点を置いた共時的対処方法と、長期的な持続性を重視する通時的対処方法をどう組み合わせるかという課題がある。長期的な持続性を重視する考え方として、ワールド・ビジョンが指摘する「子供が変われば地域や世界が変わる」という視点は、世代という時間軸に焦点を当てた事例として重要である。ワールド・ビジョンが示す支援プロジェクトでは、短期的取り組みと長期的取り組みの相克に対処するために、中期的な視点からプロジェクトの終了期限を最初から明示していた。子どもという、将来世代が変革を担う主体として認識されている。さらに、環境的に持続可能な開発という概念も、将来世代の人権を認識するという意味において、NGOが推進してきた長期的な時間観を内在化した概念として捉える必要がある。現在65億人を超える人口を抱える地球が、今世紀末には100億人を超える可能性がある中で、このまま持続可能な容量を持つのかどうかは科学的にも証明されていない。途871