ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

第26回佳作いると評価できる。したがって、今後、どのような世界を作り上げていくかは、国際社会が主権国家によって構成されている以上、各国の為政者に依拠するところが大きいと言わなければならないが、市民一人ひとりの意識や行動も重要になって来るであろう。21世紀の今日、我々は無国籍でない限りはどこかの国籍を持つとはいえ、それ以前に地球市民であるのだから。国連大学に対してはそのための叡智の創出を研究成果として期待したい。おわりに以上、考察したように、「核兵器なき世界」に向けての条件や機運はある程度は熟しているといえよう。あとは、国際社会における諸国家の利害関係を調整するという役割をもつ国連がどのような手段を持って加盟国を説得し、「核兵器なき世界」の実現に向けてリーダーシップを発揮するとともに加盟国に対する働きかけを行っていけるかである。そのための若干の提案を本稿において行った。国際政治において主権国家各々の利害が絡む以上、国連は協力の場のみならず、利害調整の場であることも事実である。核を巡る歴史は、まさに矛盾を孕んできた歴史もあろう。しかし、「国際の平和および安全の維持」に主要な責任を有する安全保障理事会をはじめ25、「核兵器なき世界」の実現に向けて全加盟国の総意を反映することが可能な総会、そして「国連憲章の番人」とも言われる事務総長26が三位一体となり、相互補完の関係を維持・発展しながら核廃絶の問題を議論していくことの重要性に変わりはない。また、国際原子力機関(IAEA:International Atomic Energy Agency)についても、「国際の平和および安全の維持」とも大きく関係するために、安全保障理事会との密接な関連性を持つと同時に27、安全保障理事会と比較していくぶん政治色が薄いという利点を持っている。この機関を活用しない手はないだろう。確かに、その道のりは決して平坦なものではない。国連憲章はそもそも原子爆弾の潜25 規範の違反や逸脱について、安全保障理事会が対処することになろう。例えば、核実験や核兵器の使用を行った国に対しては、国連憲章第39条にしたがって「平和に対する脅威」「平和の破壊」として事態が認定され、集団安全保障上の措置として第41条ないし第42条に基づく非軍事的措置もしくは軍事的措置が行われることになる。26 国連事務総長も「核兵器なき世界」を実現するために大きな役割を担っていると言えるであろう。例えば、国連憲章第99条に基づく安全保障理事会への注意喚起権限や黙示的権限である。27 IAEAの任務を定めたIAEA憲章第3条B4項においては、「機関の事業に関する報告を毎年国際連合総会に提出し、かつ、適当な場合には、安全保障理事会に提出すること。機関の事業に関して安全保障理事会の権限内の問題が生じたときは、機関は、国際の平和及び安全の維持に関する主要な責任を負う機関である安全保障理事会に通告するものとし、また、この憲章に基づき機関にとって可能な措置(第12条Cに定める措置を含む。)を執ることができる。」と規定されている。847