ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

た動向についても留意しつつ、市民社会の力を活用すべきである。様々な取り組みを行っている市民社会組織と連携をより密にすることが「核兵器なき世界」を実現するための今後の課題と言えるであろう。以上のような地方自治体の力、換言すれば市民社会の力を利用するためには、総会におけるオブザーバー資格の付与はもちろんのこと、議席ならびに投票権を付与することも一案であろう。国際社会においては、地球上の多くの人々の意思が一国一票制度を採用している総会において多数派を形成するとは限らない、ともいえるからである。それだけ国際関係はその主体の多様化と複雑化という現象を招いているのである。2平和的生存権からのアプローチの強化集団安全保障について、国連は、イラク戦争などを防止できなかったという点などを考慮すれば、その目的とする「国際の平和および安全の維持」について十分に貢献できているとは言い切れない国際組織である。紛争の平和的解決を明記した国連憲章第2条3項や戦争の違法化を明記した同憲章第2条4項をはじめとする現代国際法の原則は存在するものの、依然として国家を超越する権力体が存在しない、分権的な国際社会においては、いたし方のない現状であるのかもしれない。しかしながら、こうした集団安全保障の分野とは違い、これも現代国際法の原則ないしは特徴の一つとして勘定されている人権の国際的保障については、国連は大きな貢献を行ってきたと評価できよう。第二次世界大戦後、ナチスドイツによるホロコーストのような惨禍が再び繰り返されることのないように、国連はすぐさま1946年に人権委員会を組織すると同時に、国際人権章典の策定に取り掛かり始めた。その成果として採択されたのが世界人権宣言である。同宣言は、形式的には法的拘束力をもたない文書であるとも言えるが、今や慣習法化したとも評価されるほど、のちに採択される多くの国際人権法の礎となっている。同宣言第1条によれば、「すべての人間は、生れながらにして自由であり、かつ、尊厳と権利とについて平等である。人間は、理性と良心とを授けられており、互いに同胞の精神をもって行840