ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

第26回佳作Ⅱ「核兵器なき世界」の実現に向けた国連の役割に関するいくつかの提案1市民社会との連携市民社会との連携も「核兵器なき世界」を実現するために重要である。国家の安全保障が関連するがゆえに市民社会の関与が難しいとされてきた時代も既に終わっている。1997年のICBLによる対人地雷禁止条約の採択の再に果たした役割と、その貢献によるノーベル平和賞受賞に象徴されるように、現代の国際社会においては、民間団体をはじめとする非国家主体がもつ力の大きさは主権国家を中心とする国際関係においても大きな影響力を持つのである。そこで、「核兵器なき世界」を実現するためにも国連と市民社会とのパートナーシップ関係を今まで以上に構築していくことが肝要となる10。現状において、市民社会の代表格である民間団体は、国連との関係においては経済社会理事会における協議資格を有することができる。すなわち、国連憲章第71条によって協議資格が付与され11、その活動内容によって、一般協議資格、特別協議資格、そしてロスターの3種類に分類される。各々は、その資格によって、議題の提案などについて差異がつけられることとなる12。この点、例えば平和市長会議(Mayors for Peace)13は特別協議資格を有しており、核兵器廃絶のための緊急行動である「2020ビジョン」を推進する上で、特別に配慮することも一考に値するであろう。なぜなら、同ビジョンの目的は、第一に、核兵器の臨戦態勢の解除、第二に、核兵器禁止条約に向けた実質的交渉の即時開始、第三に、2015年を目標とする核兵器禁止条約の発効、そして最後に、2020年を目標とする全ての核兵器の解体を掲げているおり、「核兵器なき世界」に向けて大きな貢献をなしうるからである。また、平和市長会議が提唱している「ヒロシマ・ナガサキ議定書」は、2010年5月のNPT再検討会議における議定書の採択が目標とされているが、その内容は、新たな核兵器の取得と使用につながる行為の即時停止、廃絶の国際的枠組み合意に向け、保有国に誠実な交渉開始を要求、2015年までに取得や使用につながる行為の禁止を法制化、そして2020年廃絶の作業プログラム策定―を段階的に進めることを挙げている。こうし10 Jane Boulden, Ramesh Thakur, and Thomas G. Weiss, supra note (2), p.18.11「第71条〔民間団体〕経済社会理事会は、その権限内にある事項に関係のある民間団体と協議するために、適当な取極を行うことができる。この取極は、国際団体との間に、また、適当な場合には、関係のある国際連合加盟国と協議した後に国内団体との間に行うことができる。」12ちなみに、民間団体が国連史上初めて公式に発言することを認められたのは、平和の維持に関わる第1回軍縮特別総会における各国代表の一般討議終了後の全体委員会である。13 平和市長会議は、「戦争で最大の被害を受けるのは都市だ」という事実を元に、2020年までの核兵器廃絶を目指して積極的に活動している団体である。地域別加盟状況は2009年10月1日現在で計134カ国・地域3,147都市を数える。839