ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

れている安全保障理事会において、軍縮や軍備管理問題が積極的に議論されるべきである。第三に、核軍縮推進における国連事務総長のリーダーシップを強化することも重要である。国連憲章第99条にあるように、事務総長は国際平和と安全の維持を脅かすと認める事項について、安保理の注意を促す権限を持っている。この条項を法的根拠として事務総長は、米国とロシアを中心とした核兵器国への働きかけを強めることができる。また、事務総長は,諮問機関である「軍縮問題諮問委員会」や下部組織の「国連軍縮研究所」を活用して核兵器廃絶を含む核軍縮について調査・審議させ報告書を作成させることができ、それらを関係機関に提示し核軍縮推進に向けて注意を喚起することができる。さらに、アナン事務総長が軍縮に関わる国連機関と事務局組織を強化し軍縮問題に焦点を当てたように国連組織を活用して大きな影響力を行使することができる。このように国連事務総長は、軍縮・軍備管理についてさらに重要な役割を果たすことが期待される。さらに第四として、国連は地域安全保障体制の構築を支援していくことである。国際的な核不拡散体制や核軍縮交渉の枠組みを充実させるだけでは核廃絶はできない。なぜなら、地域紛争が起きる限り核拡散の可能性は否定できないからだ。国際関係において各地域で信頼が醸成されて紛争が減少し国家の安全が保障されるようになったからこそ、核兵器使用の必要性が低下し核軍縮が進んだのである。そこで国連は、前述した欧州安全保障協力機構(OSCE)に代表される地域機構の紛争解決努力を支持し、必要に応じて国連安全保障理事会が決議を採択して関係当事国に実効力のある補助手段を講じればよいのである。つまり、実力行使を含む紛争解決は第一義的に地域機構の活動に任せ、国連は停戦後の平和維持活動に重点を置く必要がある。最後に、核を含めた大量破壊兵器の拡散を防止するには不拡散を徹底する国が、経済的な恩恵が得られる制度構築も効果的である。例えば、大量破壊兵器解体基金を創設して、国連加盟国がその費用を分担する。それを原資にして核兵器解体や不拡散を徹底する国々に開発援助資金の増額や国際通貨基金・世界銀行の融資条件緩和などの恩恵を受けられるようにすることである。核開発や保有を行った場合のムチだけではなく、経済的恩恵とい794