ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

第26回優秀賞具体的には、1)国際的孤立からの脱却手段となること、2)国威発揚・体制維持の手段となること、3)政治目的の手段になりえることの三つの点があげられる。たとえば、1)に関しては、イスラエルや南アフリカの核開発のように、国家の安全が脅威にさらされ国際的に孤立状態にあり、核保有国からの「核の傘」が期待できない状況で、自国の安全保障を確保し孤立から脱却していくための手段になりえるからである。2)に関しては、北朝鮮の核開発のように、核兵器を保有することで国威の発揚と国内体制への支持を取り付ける手段となりえること、そして、3)に関しては、核開発をアピールすることで、いざという時に自国に有利なように大国からの経済的支援や調停を引き出すことができる政治目的の手段ともなり得ることなどがあげられる。このように、核保有国や非核保有国も核兵器による核抑止論に執着する事情は、そこに「効用」があるからである。中国や英国、フランスなど既存の核保有国の中でも核抑止論の「効用」にあやかろうとする動きが持ち上がる可能性も否定はできないし、こうした「効用」をねらって新たな核保有国が出現してくることも予想される。冷戦が終結し核軍縮を進め、究極的に核廃絶を目指していく立場からすれば、我々は核抑止論とどう向き合うのか、大きな難題と直面せざるを得ない。Ⅱ.核兵器の意義・役割の低減化~第一ステージのアプローチ~核解体の時代に入っても核兵器とその保有能力を軍事的、政治的に利用する「核依存」の体質は殲滅していない。それだけに、核解体の時代において、どのようにして「核依存」の体質から脱却することができるかが、大きな課題となる。そして、そのプロセスにおいて、どのようにすれば核廃絶という「目標」に現実を近づけることができるのか検討していくことが必要である。しかし、核廃絶に向けた見通しは立っておらず、核廃絶後の世界が安定した状況になるという保証もない。したがって現実的な取り組みとしては、核保有と開発の「効用」を軽減して政治的ツールとしての核が持つ「価値」を低減し、ゼロに近づけていくことが不可欠である。そのためには、別の兵器が登場して核兵器が無用になる783