ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

る倫理教育など核兵器の脅威に関する自覚を促す働きかけ、秘密裏の通報を保証する高いセキュリティに守られた特別な通信手段の用意、通報者を保護する加盟各国の国内法の整備が必要である。(勿論、秘密が守られ、通報者を保護する必要が生じない状態が理想である。論者がIT会社勤務であるから言うわけではないが、例えば北朝鮮の科学者が自国の核兵器製造を通報する場合を想定すると、高いセキュリティに守られた通信手段の用意は必須であろう。)更に、NWATの約定事項を無視する国が現れる危険性がある。この危険性を根拠に条約に加盟しない国も存在するだろう。この問題に対処するためには国際的警察力が必須となる。オバマ大統領も前出演説の中で、規則の拘束性や違反の可罰性について言及していた。十分な機能を発揮し得る国際警察力が存在すれば、露見するリスクを犯してまで核兵器の再開発を目指す国家はより少なくなるだろうし、万一出現したとしても対抗できるであろう。主な装置として安保理決議によって組織される国連軍と平和維持活動における平和維持軍がある。平和維持軍には複数の活動実績があるが、必ずしも円滑に機能発揮しているわけではない。例えば「指揮が国際的に適用される場合には国軍におけるそれより弱い程度の権威を含意する」と指摘*15されている。過去の経験に学びながら、効果的な国際警察力のあり方について議論すべきである。現行の平和維持軍は組織化するのに時間がかかり過ぎるし、行動の制約を多すぎる。この点が改善を要する点であろう。国際警察力への信頼が安心してNWATに加盟する有力な理由になる。論者は実は当章で述べた取組みは原則国連が担うべき役割として提示した。勿論、これらの役割の中には国連よりも他の国際機関が実施した方が適当なものもある。例えば、査察に関する事項は国連よりも査察機能の一貫としてIAEAが担う方が適当であろう。しかし、国連総会決議などによって、査察の新しい手段実現に向けた国際世論の喚起を推進することは国連の役割だ。尚、当章で記述した内容以外の国連の役割として、第四章で提示した事務局機能の発揮がある。方針が揺れる国内政治とは隔絶した場所にこの事務局機能を設置すべきことは自明の理であり、国連が機能発揮を果たすことが期待される。758*15「国際平和維持活動と「多国籍軍」」山下光防衛研究所紀要2007年12月