ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

第26回最優秀賞結した時点で一気に核兵器を廃棄するのだから、その時点で他国が本当に条約を遵守し、約束通り核兵器を廃棄するのか、不信感を持つ国も出てくるであろう。国家間の不信が現在核兵器廃絶の進まない理由の一つであるなら、このプロトコルを全加盟国が納得する形で定めてあることが是非必要だ。当プロトコルは透明性があり、全加盟国が相互に核兵器廃棄に向けた進捗を確認し合えるものでなくてはならない。このことによって、核兵器廃絶の時点の国家間の不信を排除し、核兵器のない世界への円滑な移行を実現する。NWATは脱退を禁止するものとする。当条文には違和感を持つ人たちも多いであろう。しかし、この条文がなければ、ある時には国内事情の後押しを受けて条約を締結し、ある時には国内事情の揺り戻しの影響で脱退し、一進一退を繰り返しながら、永久に全ての国々が条約を締結する状態を実現できないと想定される。脱退禁止条項は必須なのである。永世中立国として認められた国々にはスイス、オーストリア、トルクメニスタンがある。NPTも当初は25年間の期限を付した条約であったが、1995年の再検討会議において条約の無期限延長が決定している。どちらも概念は異なるので同列に論ずることはできないが、脱退禁止条文も空想では無い。脱退禁止条項が必要なもう一つの重要な理由がある。NWATが発効し、核兵器のない世界が実現されたと想定しよう。その世界は核兵器の恐怖から解放された世界だろうか?論者は違うと思う。極端な言い方だが、核兵器のない世界とは、ある国が秘密裏に核兵器再開発を実現し、ある日突然その圧倒的軍事力で世界を支配する恐怖に脅える世界だと思う。核技術を人類は手に入れてしまったのだから、その軍事的利用に関する恐怖から逃れることはできない。核兵器のない世界とは実現した時点で努力が終る世界ではなく、実現した後も永続的に努力を重ねていく世界なのである。再核軍備を企図する国が表れないよう、NWATからの脱退は禁止しなくてはならない。核兵器のない世界が実現した後も永続的な努力が必要という事実はNWATが核兵器再開発に向けた行動を早期に発見するために必要な査察を全加盟国が受け入れる条文を含むべきことを意味している。これも冒頭掲げた第三条件(約束を不可逆的なものにする仕掛755