ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

方針で条文に妥協を加え、結果的に核兵器保有につながる抜け道を作るよりも、将来のいつか条約に加盟することを前提として妥協のない条文とする方が目標への近道となろう。特に核兵器廃絶という全ての国々が賛同しなくてはいけない問題ではこのことが当てはまる。妥協を加えた取組みは今までも多数あり、核兵器廃絶に結び付かなかったことは歴史が示している。北朝鮮が今後72年間、今の方針を貫くとは思えない。ここで最後の条件が発生する。国内事情により核兵器保有に対する方針が振れるとしても、ある時は核兵器廃絶に揺れ、ある時は核兵器保有に揺れるのであれば、一進一退を繰り返すばかりで、NWAT発効という目標は永遠に実現しないであろう。そこで、NWATの中には、他の全ての国々が核兵器を廃絶したならば自国も廃絶するという約束を不可逆的なものにする仕掛けを導入する必要がある。論者は前章で核兵器廃絶という最終目標に向けたシナリオの必要性を述べた。この不可逆性を保持する仕掛けがシナリオの内容になる。第四章NWATについて前章で論者はNWATが成立するために、第一条件:全ての国々が締結すること、第二条件:時間軸の概念を導入すること、第三条件:約束を不可逆的なものにする仕掛けを内包することが必要であると論じた。当章ではこれらの条件を踏まえてNWATの具体像について検討する。繰り返しになるが、NWATは核兵器をただちに廃絶する条約では無い。その実質的効力は前提が成立する将来のある時点で発生する。現在でも核兵器非保有を表明した国々はNWATを締結する可能性が高い。核保有国であっても国連総会での核兵器廃絶決議に賛成した国々はNWATを締結する可能性がある。NWATは締結に至る期限上の制限を設けないので、一旦、NWATに加盟しないと判断した国々でも国内事情の変化により加盟する意思が整った場合にはいつでも加盟できる。NWATでは核兵器を廃棄する詳細なプロトコルを定めることとする。全ての国々が締754