ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

第26回最優秀賞「核兵器廃絶条約その内容と実現可能性を高める取組み」副田雄はじめに核軍備について純然たる個人的希望を問うなら、おそらく全ての人が全世界で例外なく核兵器が廃絶された状態の実現と回答するだろう。しかし、その同じ個人が一国の首班として国益実現の責任を負う時、軍を代表し、国家の安全保障に責任を負う時、公人としての考え及び行動は彼らの個人的希望とは異なるものになってしまう。一国民として母国に忠誠心を持つ(当然のことだ)人たちが世界市民という立場で考え、行動することは困難なことだが、母国に対し重い責任を負う立場にある人たちには、更に困難なものとなるのだろう。核兵器廃絶という国際問題は、結局、国内の政治状況や軍事状況に左右される個々国家の意思が各国間の交渉過程で利害を衝突させ、発生する問題である。当論文ではこのような基本認識に立ち、冷静に現実を踏まえた核兵器廃絶論議を進めていきたい。当論文ではまず第一章で核兵器問題に対する今までの主な取組みを概観し、第二章ではこれらの取組みの結果が明確にした事項を抽出する。ここまでが過去と現在のレビューであり、第三章ではこのレビューを踏まえ、核兵器廃絶を目指した取組みが具備すべき条件を記述する。第四章で当該条件を網羅した核兵器廃絶条約(Nuclear Weapon AbolitionTreaty以下、NWATと称す)の骨子を提示し、続く第五章ではNWATの実現可能性を高めるための取組みを論じた上で国連の役割を述べる。最後に第六章として今後に残された課題を整理する。核兵器廃絶という目標は言うまでもなく実現がほとんど困難と思える目標である。しかしながら、当論文の中で解決への道筋が、極めて細いとしても、実感してもらえるなら幸いである。(尚、当論文では核軍縮など核兵器全般に関わる問題を核兵器問題と記述し、核兵器廃絶問題とは表記を使い分ける。)747