ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

係をめぐる問題である面が多い。環境への負荷を抑えつつ生活水準の向上を実現できるかどうかは、先進国の技術的・資金的援助のあり方に大きく左右されることになる。未共時化国における環境問題は、貧困と密接に結びついている。焼畑や過度の放牧によって農地が劣化し、土壌流出や砂漠化が引き起こされる。土地を失った農民はさらに耕地を求めて周辺地域を開墾したり、都市に出たりする。開墾によって森林はさらに減少し、人口が過剰になりスラム化した都市が様々な汚染源と化す。また、環境に対する規制がほとんどないために、先進国から汚染物質や環境負荷の大きい産業が「輸出」されるという事態も生じている。有効な統治体制が確立されていないために、援助の効果も十分にあがらないことが多い。援助政策の中に環境問題への視点をうまく組み合わせることが必要となろう。最後に、「はみだし現象」をどのように扱うかが重要となる。近代共時システムの枠を超えて環境保護を追及する行為は、時に混乱を招くことになる。今後一層、国際会議などにおける環境NGOの存在感は強まると予想される。彼らの意見をどのように国際社会に反映させ、その地位をどのように位置付けるかは、主権国家システムの根幹に関わる重大な問題となってこよう。(二)国連の役割これらの問題はいずれも、主権国家からなる分権的な世界では解決困難であり、何らかの公共政策が必要となる。国連こそ、その役割を担うにふさわしい。国連は、四つの課題すべてにおいて重要な役割を果たすことが可能である。まず、国際的な環境レジーム形成の中心となることによって、再通時化国における持続可能な経済体制への移行をスムーズにすることができる。国際競争力低下への懸念から、環境への影響を価格に反映させることには抵抗があるが、国際的合意に基づいて同時に実施すれば、その障害は抑えられる。第二の共時化国における持続可能な発展に対しては、開発援助を通して国連が関わることができる。再通時化国における環境保全のためのノウハウを効果的に共時化国に移転し、70