ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

第17回優秀賞四.二十一世紀の国連(一)四つの課題さて、このような世界における課題は概ね以下の四点にまとめることができる。1先進国の再通時化をいかにして達成するか、2共時化国の発展をいかに持続可能なものにするか、3未共時化国での飢餓や貧困の問題をどう解消するか、4 NGOなどの「はみだし現象」をどのように扱うか、である。まず、再通時化国においては、いかにスムーズに持続可能な経済体制を実現できるかが重要な課題となっている。太陽光、太陽熱、風力、潮力、燃料電池などのクリーンエネルギーの開発、自動車の燃費向上といった技術面、ゴミの削減、省エネといった生活スタイルの面での取り組みに加え、社会制度面の充実も必要となる。炭素税のように環境に負荷をもたらす経済活動に対して課税する「環境税」は、ヨーロッパでは既に導入されている。企業に対して製品のリサイクルを義務化したり、企業の生産活動全体が環境に与えている影響を数値化する「環境会計」を導入したりする試みが行われている。こうした取り組みは、国内的に様々な摩擦を生む可能性がある。環境対策のコストが製品の価格に反映されるために企業の競争力が低下し、経済に支障をきたす恐れがある。環境政策が厳しい国から緩い国へと企業が流出する問題もある。共時化国の問題は、最も重大である。これからの国々では環境に対する配慮よりも経済成長が優先され、大規模開発が行われる場合が多い。発展途上国は、国際的な環境会議において、「これまで先進国が環境破壊を進めてきたのだから責任の大部分は先進国にあるにも関わらず、途上国の経済成長に口出しするのは公平ではない」といった主張をしばしば展開する。途上国援助や多国間融資において環境への配慮を条件とすることにも反発が強い。したがって、この問題は共時化国自身の問題と言うよりも、共時化国と再通時化国の関69