ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

第25回優秀賞合、制限され、あるいは排除されることに繋がると、地域の伝統的文化や相互扶助のような生活安全保障が損なわれることになりかねない。まとめ本稿では、「政策要因」の改善を念頭に、アフリカという大きな枠組みが、地域共同体、各国の個別性を尊重しながら、中立的に補完しあって繋がる方法の可能性を検討した。アフリカは多様であり一括りにして語ることはできないという批判と同時に、アフリカ地域経済という大枠に収容して、一定の構造を備えたものとして把握する可能性を模索してする動きも見られた。確かに、アフリカの民族の多様性に起因するものと考えられる「社会の分断」は、紛争の原因の一つとして考えられている。伝統的な地域共同体では、生活を単位とした決まり事を重視する慣習を残していることを前提とするならば、アフリカ開発にとっては、地域共同体の価値観を活用しながら「生活の単位」と「制度の単位」をバランスよく取り入れ、アフリカの地域共同体などの単位を、より大きな枠組みとのネットワーク化させ、相互補完的な仕組みを設けるほうに合理性が見いだせまいかという問いであった。社会の単位を考えれば、親族の特別な絆というものが、連帯を支える基礎である人間関係社会もあるが、スウェーデンのように、よい統治と法律により担保される「権利ベースのアプローチ( Rights-based approach )」により支えられている社会もある。開発途上国とされる地域において確認される血縁・地縁の人間関係、アソシエーションなど多彩な枠組みを軸とした伝統的な資源管理、分配の方法を通して持続的生活を組み立てていく「慣習経済(高橋2002)」のような社会もまた「一人一人の福祉」を実現するためのひとつのかたちであることは間違いない。ヒデーンも、アフリカの今日の社会関係において行われる意思決定は、「西欧的概念の経済人としての合理性とは異なるが、全く合理的である」としている(Hyden 1983:11)。689