ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

第17回優秀賞抱えている国も多い。共時化が不十分なために国際社会において不利な立場に置かれやすいことが、問題をより複雑にしている。三.三つの問題領域地球環境問題の出現によって、国際政治におけるゲームのあり方が変容した。地球環境問題は将来世代のために現在世代の経済規模を抑えるという側面を持っており、他世代の利害が考慮されているという意味で「世代間ゲーム」の要素を含んでいる。近代共時システムから排除されてきた他世代が、ゲームの上で考慮されるべき利害当事者として、浮上してきている。「世代間ゲーム」という新しいゲームのあり方が登場したことで、国際社会における国家間関係は、伝統的安全保障問題に代表されるゼロサムゲーム、相互依存の進んだ経済分野に代表されるノン・ゼロサムゲーム、環境問題に特徴的な「世代間ゲーム」の三つが並存することとなった。第一のゼロサムゲームとは、ある国家にとっての利益が、そのまま他方の国の不利益になるような関係である。伝統的な安全保障において、侵略国の獲得した領土がそのまま被侵略国の喪失した領土となるような場合である。ここでは、限られた資源・価値の配分が主要な争点となる。国家は自国の利益を最大化するために、自国の合理的判断に基づいて行動し、国家主権の独立性が強く主張される。第二のノン・ゼロサムゲームとは、ある国家にとっての利益が他の国にとっても利益となり、また逆に、ある国にとっての不利益が他の国にとっても不利益となる場合が含まれるような関係である。相互依存の進んだ経済分野においてよく見られる。顕著な例は国際金融システムの維持であろう。各国の金融市場が情報通信技術の進歩とあいまって密接に結びつけられ、国境を越えてマネーゲームが繰り広げられる現代においては、一国における金融システムの破綻は、他国にとっても深刻な打撃となる。こうした状況においては、自国だけが単独で利益を追求し、国際金融システム自体を損なえば、より大きな損害を被67