ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

第25回優秀賞いることが窺える。国連には様々な専門家や研究者が活躍していると承知しているが、地域共同体を含めた多元的な価値を尊重し、中立的な視点に努めながら異文化をつなぐ試みは、新しい価値を導く機会となる。パーソンズの「社会は折に触れて文化の諸処のモデルと諸処の「現実」との不均衡に直面するが、その状況が文化の再組織化を生み出していく」という言葉が示唆するように(Persons,1961)、個別な価値もやがて時間を経てある意味で普遍的な価値を持つ世界システムとつながっていくかもしれない。しかし、このような価値の受容は、最終的には、あくまで受け入れる主体である共同体側によって選択的に行われる必要があり、専門的知識を持つ国際機関による極めて繊細かつ高度な支援がなされる必要があることを忘れてはならない。2.補完性原理とインターリンケージ地域の伝統的共同体を尊重しながら、より上位の枠組みとの間で相互補完的な関係を結ぶことの可能性を考える上で参考になるモデルとして、国連大学が注目する多国間・多層間の各レベルを結ぶインターリンケージ(inter-linkages)を取り上げてみたい。ここで取り上げるインターリンケージは、主に国際的課題として環境保全に焦点が当てられているが、地域共同体と上位枠組みの各レベルのプレーヤーを補完する仕組みとして、「政策要因」が関係する幅広い領域に適用可能であると考えた。(1)地域共同体における生活世界の視点環境保全や経済発展の現場の担い手として期待されているプレーヤーとして地域共同体が注目される。一般的に伝統的社会では、代々先祖から受け継いだ土地は親族の慣習地として特別な価値を与えられている事例を聞く。地域住民は、西洋の所有観の影響を受けながらも、伝統的な方法で慣習地の資源管理を制御してきた。地域の資源を共同的に管理、利用する制度にコモンズ(the commons)がある。コモンズは「自然資源の共同管理制度、681