ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

4-3.開発援助のあり方貧困には経済的貧困と社会的貧困の2種類が存在する。経済的貧困とは所得や物質の欠乏状態であり、社会的貧困とは人間的生存ニーズ(寿命、識字率、衛生)や社会的生存ニーズ(能力開発、ジェンダー、自立)の欠乏状態である。従来、国際協力における援助は経済的貧困を解決するための開発援助が中心であったが、インフラ建設、産業プラントなどの「物理的(ハードコンポーネント中心)施設の開発プロジェクト」が抱える問題点として、1プロジェクト後の運営経費の確保、2地域住民の依存心の除去、3物理的プロジェクトで整備されたものと周辺の社会構造のギャップの解消、4物理的プロジェクトを持続的に運営していく人材の確保、などが挙げられる。そのため、今後の国際協力に必要な開発は、小規模農業、教育、家族計画、保健と栄養といった社会的貧困を解決するための地域住民対象の人間中心(ソフトコンポーネント中心)の開発プロジェクトではないだろうか。つまり、経済開発だけでは貧困は解決せず、持続的な経済発展のためには経済システムだけではなく社会システムの確立が不可欠であり、経済システムと社会システムの2つがあって初めて経済的貧困も解決が可能なのだ。では実際に熱帯林保全のための国際援助を具体的にどのように行っていくべきか。単純に経済援助や植林を行うだけではなく、住民自身が森林の保全に対するインセンティブを持てるような参加型の森林保全活動が出来るようにするためには社会開発が求められる。社会開発には、世帯、親族社会、近隣世帯の集まりといったミクロ社会の開発(地域住民の自立・自助・自決を目指した不断の自己変革と自己成長)と伝統的村落といったマクロ社会の開発(村落の伝統的共同体の前近代性を変革するため、既存の社会構造を分析し、開発の主体者と開発利益の享受者を明確にした上で、近代的なコミュニティへの再編成を進める)があり、それらを達成するためには「キャパシティ・ビルディング」「コミュニティ開発」「生活基盤整備」が必要である。まずキャパシティ・ビルディング39とは、人間の行為を行うための各人の潜在能力を発揮できるようにすることである。これは家族、有力者、地方行政、国家などによって社会的に力を剥奪された状態からの権限40の確保と62839「エンパワーメント」と言い換えることが出来る。40意思決定システム、ジェンダー、教育など