ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

「地球環境問題と二十一世紀の国連」第17回優秀賞野林亮要約本論文の目的は、地球環境問題という観点から、二十一世紀の国連のあり方を考察することにある。社会運営において、伝統、先祖、家系、子孫など世代を超えた時間軸上の要素が重視されている社会を「通時システム」、逆に同一世代内の関係を重視する社会を「共時システム」と呼ぶことにする。近代化は、伝統的な通時システムを共時システムにする過程と見ることができる。他世代からの影響力を最小化する近代共時システムは大規模な経済活動を展開する基礎となった。しかし一方で人間活動が地球環境に及ぼす悪影響は増大した。地球環境問題の重要性が認識されるようになると、近代化を成し遂げた先進国を中心に、循環社会を目指す動きが現れてきた。これは共時システムの再通時化ととらえることができる。こうして、現代世界には、近代化を遂げ循環社会への転換を模索し始めた「再通時化国」、今まさに近代化を進めている「共時化国」、近代化を経ていない「未共時化国」の三つが存在する。地球環境問題は、国家間関係のあり方も変えた。地球環境を巡る国家間関係は、将来世代の利害を考慮に入れる「世代間ゲーム」の要素を持っている。こうして、現代世界には、安全保障に代表されるゼロサムゲーム、経済問題に代表されるノン・ゼロサムゲーム、環境問題に代表される世代間ゲームの三つが並存している。61