ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

ドでも、単に資金・技術供与の拡大を要求し続けるのではなく、「森林分野の援助は、『持続可能な開発』の観点から極めて効果的な投資対象である」ことを実地に証明していく努力が求められる。このような取り組みを通じていけば国際的法的枠組みを作成できる雰囲気を醸成することは可能であり、現状よりも前進するものと私は考える。生産国-消費国、先進国-途上国という既存の対立軸のみならず、森林減少に伴う気候変動等の影響に対して脆弱な国を含む全ての国家の意見を集約することが出来る点は国連の強みである。第4章貧困削減と社会開発型援助4-1.熱帯林減少と貧困問題熱帯林減少への対策として伐採の防止、焼畑の防止、植林活動などのプロジェクトが先進国や国際機関を中心に行われ続けている。そのようなプロジェクトは現地のスタッフを雇って行うのが一般的であるが、プロジェクトが成功してしまうと現地の住民は失業してしまうので火入れや焼畑を行ってしまい、結果的に熱帯林の減少を食い止められないという。熱帯林減少の背景には開発途上国における急激な人口増加34や貧困などの社会・経済的な問題が存在すると第1章で記した通りだが、人口増加や貧困が林産物(木材、薪)や水の不足を生み、それが流域環境の劣化に伴う水不足を生み、それによって土地生産性の劣化に伴う養分不足が生じ、やがて過剰な土地利用による森林減少を引き起こし、また林産物や水の不足に戻ってしまう。やはり根本的な原因である人口増加や貧困といった社会・経済的問題が解決されない限り、熱帯林の減少も食い止められないと考える。4-2.開発に対するスタンスの変遷1950年代以降の環境問題と経済・社会開発との関わりを記す。1950年代、日本やドイツの経済復興は目覚しかったが、植民地各国は政治的な独立を果たした後も経済基盤の整備が進まなかった。政治的従属(抑圧)と経済的従属(搾取)に基づいた植民地経済からの自立は、日・独のように既に社会システムが存在しているところとの違いが如実に現れたのである。1960年代、先進国(日本では高度経済成長期)では急速な経済発展に比べ62634 農業技術が収穫逓増技術ではなく収穫一定技術の場合、人口が増加すればするほど貧困は深まる(途上国の多くは未だに収穫一定技術である)。