ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

ページ
613/1096

このページは 佐藤栄作 受賞論文集 の電子ブックに掲載されている613ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

概要

佐藤栄作 受賞論文集

第24回優秀賞それには以前から叫ばれつつ実現していないUNEPの強化ではなく、WEO”WorldEnvironment Organization”の創設が望ましいと考える。UNEPは執行権をもたない限定的な権限しか有していないが、これまで、環境情報とデーターベースの構築、政治的外交的介入によってオゾン層の保護、生物多様性の保全、砂漠化防止のための国際条約交渉の調停役を果たし、WMOと共にIPCCを設立させるなど活動が目覚しく、今後も存在は更に重要になると考えられている19。しかし、UNEPは政治的権力と資金不足に悩まされている。UNEPの設立時から20年間の予算総額は10億ドル以下であり、他の国連機関の予算より少ないだけでなく大型環境NGOの予算よりも少ない。また、UNEP職員は300-400名で各国の環境関係官庁の平均人数よりも少ない。なおかつ、本部がケニアのナイロビにあり、国連機関や世界の環境機関との連携は非常に困難な状況にある。加えて、持続可能な開発委員会(CSD)、地球環境ファシリティー(GEF)事務局など世界各地に点在する国連の環境問題関係の事務局、そして、気候変動問題、海洋汚染、生物多様性関連などUNEPの管轄外であることも問題である。また、個別のプログラムへの寄付金の増加によってUNEP全体のバランスが崩れ、偏った政策を執らざるを得なくなり、本来のUNEPの役割である環境状況報告や早期警報など中核的プログラムに悪影響を及ぼしている現状を改善する必要がある。IPCCの強化もさることながら、各国、特に途上国に環境対策の専門家や科学者が非常に不足している現状を鑑み、それらの地域に専門家を派遣し情報収集・分析を行う必要がある。そのためにも、既存のUNEPから更に多角的な方面、特にNGOからの積極的なアプローチが可能な組織としてのWEOの設立を期待したい。それには、UNEPの問題点である資金と人材の確保、そして、政治的権限の強化、国連の環境関係事務局の統合とワシントンD.Cへの常設事務局を移転するなど抜本的な改革が必要であり、これはUNEPの強化ではなくWEOの創設と言う形でこそ出来ることである。そのためには、国連内においては、仕事の効率性向上のための組織改変が必要であるが、資金源や人材の確保、環境運動の促進にはやはりNGOとの協力が不可欠である。19前掲「地球ガバナンスの現状と展望」101頁611