ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

人間の社会にも大きな影響を及ぼすと考えられている。2~3℃を超える平均気温の上昇が起きると、全ての地域で利益が減少またはコストが増大する可能性がかなり高いと予測されている16。また温暖化を放置した場合、今世紀末に5~6℃の温暖化が発生し、世界がGDPの約20%に相当する損失を被るリスクがあるとされる17。このように地球温暖化のリスクが巨大であることが示される一方、その抑制(緩和)に必要な技術や費用の予測も行われている。スターン報告やIPCC第四次調査統合報告書の集約した学術的知見から、人類は有効な緩和策を有しており、温室効果ガスの排出量を現状よりも大幅に削減することは経済的に可能であり、経済学的にみても強固な緩和策を実施することが妥当であるとされる。同時に、今後10~30年間の緩和努力が決定的に大きな影響力を持つとも予測されており、現状よりも大規模かつ早急な対策の必要性が指摘されている。加えて、二酸化炭素の濃度が現在より高まることは地球にとっても様々な悪影響を及ぼすであろう。中でも、二酸化炭素の最大の吸収源である海洋は酸性化し、そのためプランクトンが減退し食物連鎖のバランスを崩してしまう事や、海洋汚染にも繋がるとの指摘もある18。これらのことから、二酸化炭素の過大放出は普遍的義務としての枠組条約の性質を満たしていると考えられるが、そのためには議定書履行確保のためのシステムの確立が不可欠であろう。結語本論では地球温暖化問題に焦点をあてて、2012年以降の気候変動枠組条約(ポスト京都議定書)制定に向けた国連の役割について考えてきた。本論の狙いは途上国を含めた全世界が議定書に参加し、各国が温暖化対策に真剣に取り組むことを求めている。そのために、取り敢えずは政策・措置導入に対するコミットメントという緩和的な内容の議定書の締結を目指し、そのペースメーカーとしてNGOと連携した国連機関が協力・監視するというシステムの確立することを最後に提言したい。61016IPCC第四次調査統合報告書環境省ホームページhttp://www.env.go.jp/earth/ipcc/4th/interim-j.pdf17スターン報告書、Stern Review http://www.hm-treasury.gov.uk/independent_reviews/stern_review_economics_climate_change/sternreview_index.cfm18 http://www.agu.org/journals/gl/