ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

ページ
608/1096

このページは 佐藤栄作 受賞論文集 の電子ブックに掲載されている608ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

概要

佐藤栄作 受賞論文集

進国・途上国に温室効果ガスの削減を求めていく議定書の締結が最も現実的な方法であると考える。これは、京都議定書以前に戻すのではなく、京都議定書が米国の不参加と一方的な不公平な削減義務によって無理やりなされた議定書である事を素直に認め、仕切りなおすという意味で重要であると考える。確かに、現在のところ、京都議定書を超える国際的合意は現実的には不可能であり、京都議定書を発効できたことは高く評価されるべきである。また、京都議定書は各国のコンセンサスによって構築され発効している議定書であり、これを超える議定書を一から作り出す事は多大なコストがかかり賢明ではない。なおかつ、脱温暖化に向けた行動が軌道に乗るまでは明確な目標を示した京都議定書は重要な役割を果たしている。殊に、気候変動枠組み条約の下で法的拘束力のない目標が全く守られなかった歴史や京都議定書離脱の米国では温室効果ガスの排出量が1990年比で15.8%の増加をみても、議定書の意義が理解できる。加えて、議定書発効に伴いビジネスや経済分野でも排出権取引の市場が拡大し、温室効果ガス排出に配慮した会社への投資が増加するなど様々な変化がもたらされている。しかしながら、米国や途上国の温室効果ガスの削減がなく、このまま京都体制を維持した場合、2020年には2012年比で20%削減した場合の総排出量は、米国や途上国を含めたすべての国が7.7%削減した数値と同じになる3。さらに、中国・インド・インドネシア・ロシア・イラン・南アフリカ・ベネズエラ・カザフスタンで環境破壊的エネルギー補助金を廃止する事で世界の総排出量の4.6%を削減でき、エネルギー効率を高める事で7.7%の削減は困難であるとは言えない。京都体制下で削減義務を科せられた先進国は環境問題に対して、これまで公害をはじめ幾多の経験を経て、環境に対する配慮は途上国の比ではないにも拘らず、さらに努力を強いられる事による目標達成は現実的には薄いと考えられる。もっとも、こうした政策・措置導入に対するコミットメントが京都議定書以前に戻す物ではないためには、その体制作りが非常に重要である。米国はもとより、途上国が自国の6063(財)地球環境産業技術研究機構(RITE)ホームページhttp://www.rite.or.jp/