ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

第24回優秀賞こうした問題を解決することが国連・国際社会には求められている。米国の不参加と途上国は削減の義務を全く負っていない事の二つの問題点は相互に深く関係している。ポスト京都議定書では先進国の最大の温室効果ガス排出国である米国をいかにして議定書に引き入れられるかを考えることが必要である。これは米国抜きの国際レジーム2が数多く見られる現在、米国の参加は国際社会全体の大きな課題とも言えるからである。欧州諸国は京都議定書の基準を第一約束期間以降も厳しく継続しておくことが必要であると主張しているが、そうした状況では米国の参加は望めないであろう。また、米国が参加しなければ中国やインドといった主要な途上国が参加することは考えられない。さらに、懸念されていたロシアの参加が実現したが、ロシアの批准がWTO加盟に対するEUの支持との引き換えによるものであると考えられることから、更に基準が厳しくなった場合、ロシアが議定書から脱退することも考えられる。京都議定書は排出権取引“Cap and Trade”を規定しているところに特徴があり、環境問題解決に取引という経済力を利用する事は効率性が高い物がある。しかしながら、いくつか根本的な問題がある。まず、Capされた先進国の排出絶対量は不変であるにも拘らず、途上国が経済発展した場合、Tradeすることが出来なくなる点が考えられる。また逆にスタグフレーションが続けば目標は殆ど努力を払わず達成できるという欠点がある。そして、初期配分の問題がある。負担の大きい国は不公平感をぬぐう事はできず、緩めの配分を受けた国は努力しないで余った排出権を売却することができる「ホットエアー」が発生してしまう点である。これは初期配分の規定の難しさと、議定書の不公平感と協調のバランスを失する物であるとも言える。ポスト京都議定書の目標と方法最も効率よく地球環境を改善するために重要な事は、米国と途上国が温室効果ガス削減へ参加することである。そのためには、取り敢えずは具体的な数値削減目標を掲げずに先2国際刑事裁判所規約、対人地雷全面禁止条約など605