ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

第24回優秀賞【表3:国連の対策】問題経済活動への負担技術の不足資金不足提唱国米・中・印中・印・後発途上国中・印・後発途上国・小島嶼国問題の現状【中国】?中国においては、地方政府が環境保護局の予算権と人事権を握っているため、環境に対する意識に地域格差が生じている。特に中央から遠いところではどうしても環境保護よりも経済発展や失業対策に予算が回されてしまう。【インド】?主要排出国の一つであるインドは、年間石炭5億トンに相応するバイオマスのポテンシャルがあるにもかかわらず、再生可能エネルギーを作る技術が高くつくことを理由に導入を拒んでいる。【インド】?インドはGHG排出量関連の統計が完全に整備されていなく、国連への報告に必要な統計整備について、技術や資金の支援を先進国に求めている。【後発途上国】? GHGが多量に排出され、削減のポテンシャルの高い国においてはCDM事業が発展するが、排出量が少なく削減ポテンシャルの低い国においては発展しにくいことが問題となっている。現在、国連CDM理事会登録済みプロジェクトは907件、そのうちの上位3国はBRICsであり、全体の63%の割合を占める(図7参照)。そもそも多量のGHGを排出する途上国とは、中国・インドをはじめとする経済成長の芳しい新興工業国であり、これらの国への技術移転は途上国間のさらなる格差拡大につながることが懸念される。? IPCC第3次報告書は、異常気象による世界規模での経済損失が、1950年代の年間39億米ドル、から1990年代には年間399億米ドルへと10.3倍増加していることを示している。【中国・インド】?「被害対策費の捻出も難しい中で、新たにGHG削減対策費を講じることは困難だ」と主張している。【後発途上国】?産業の63.2%を第一次産業に依存しているバングラデシュのように、脆弱な経済構造を有している多くの後発途上国にとっても、環境破壊は主産業に直接影響を与えることが予想される。【小島嶼国】? UNDP『人間開発報告書』も、小島嶼国のモルディブは海面の1メートル上昇に伴い、GNPの34.33%の海岸防衛費を講じる必要性があると指摘。CDM案件の承認を促進対策1ホスト国自身の制度的キャパシティの構築2従来のCDMよりも手続きの少ない小規模CDMの拡充、3新興経済国と後発途上国間のクレジット発生量に差をつける1国連主導の「基金」の運営2他の基金との連携・整合性を図る事効用? Jotzo, FrankとMichaelowa, Axelによる報告書”Estimating the CDM market underthe Bonn Agreement”の試算に基づくと、CDMのクレジット(途上国が先進国に売る排出枠)の売却高は年間14億ドルに上るとされる。これは、COP6でEUとカナダ・ニュージーランドが発展途上国に対して拠出を約束した「年間4億1000万ドル」の資金提供の3.5倍にあたり、中国・インドにとってCDMは経済活動を促進する大きな魅力となる。?インドは2008年1月21日現在、304件の国連CDM理事会登録済みプロジェクトを抱えており(図7参照)、世界全体のプロジェクトの33%にものぼる。中国も152件でインドに続いて第2位の件数を誇る。従って、CDMを活用して今後とも経済に負担をかけずに、エネルギー効率の向上行うことが可能となる。? CDMは途上国のGHG削減を行った先進国にクレジットを与えることで、途上国への技術移転を促進させ、南北格差縮小に貢献するシステムとされている。さらにCDMは技術の移転だけなく、無電力地域の電化による生活の質の向上や、地域雇用の促進という副次的効果も生み出す。【ホスト国自身の制度的キャパシティの構築】?後発途上国がCDMを承認するための機関自体が整備されれば、承認の手続きが行える。【小規模CDMの拡充】?国連が登録手続きの簡略化された小規模CDMを後発途上国にて推進することで、大企業にも劣らない優れた技術を有する中小企業がプロジェクトを行いやすくなる。【途上国の中でクレジットの発生量に差】?クレジットの発生量に差をつけることで、今まではプロジェクトになりにくかった後発途上国でもCDMが活用される? COP13においても「適応基金」の運営方法に合意がなされ、CDMを利用した場合に、クレジットの2%分を援助資金として換算し、基金に回す仕組みとなった。この方法による集金方法は、2030年までに年間1億~50億ドルの積み上げを可能とするものの、国連環境計画(UNEP)が2001年2月に報告した、2050年までに必要な年間3000億ドルには到底満たない。?現在気候変動に関する基金は代表的なものとして【表4】のようなものがある。この他にも、各国が独自に設立した基金が存在するが、それぞれの基金が重点を置く対象は異なり、連携が取れていない。また、「適応基金」以外の基金は先進国の任意の拠出のため、一つ一つの基金が行う支援には限りがある。?従って、各基金の整合性をはかり、連携して資金援助を行うことで、途上国の必要とする支援を可能とする。593