ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

て冬の時代のはずである。しかし現実には、各国が政治の場で地球温暖化問題の交渉をし、この問題でいかにイニシアチブを確保すべきかを模索している。これはひとえに地球温暖化問題が各国の経済やエネルギー問題と密接につながっており、もはや単なる環境問題ではなく、国の安全保障に関わる問題に変容してきたためと考えられる。以上の4点の理由により、地球温暖化問題に焦点を当てる。そして第Ⅱ章以下で、この問題に取り組むための実効性のある国際枠組みと、国連の役割を、冒頭でのべた「6つのシナリオ」から考察したい。第Ⅱ章地球温暖化のための実効性ある国際枠組みとは―6つのシナリオからの検証現在、IPCC第4次報告書が、人間活動によって生じた温室効果ガス(Green HouseGas:GHG)がこの問題の主たる要因であると指摘したのを受けて、多くの国がGHG削減に努めている。問題の早期解決のためには実効性のある国際枠組みが不可欠だが、アメリカ、中国、インドは、CO 2を多量に排出する化石燃料依存型経済の停滞を理由に削減義務を拒否している。また、その他の途上国も貧困問題により、化石燃料に依存しない新エネルギーへの転換は困難だと主張する。この様に、政治情勢や経済基盤の違いから各国の主張に違いが生じ、温暖化防止への取り組みは一枚岩ではない。第Ⅱ章では、各国の取り組みをまとめるための「実効性ある枠組み」は何かを考える。そしてその上で、現在の枠組みの実効性の有無を検証する。1.実効性ある国際枠組みへの6つのシナリオそもそも国際枠組みとは何だろうか。国際社会が足並みをそろえて一つの問題に取り組む時に必要となるのが「枠組み」、つまり「国際的なルール」である。では、実効性ある枠組みには何が必要だろうか。第一条件は、問題の当事国が参加していることである。たとえば、核兵器の不拡散に関580