ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

第Ⅰ章地球環境の現状この章ではまず、幾多の環境問題の中からなぜ「地球温暖化」を取り上げるのか、その理由を述べたい。まず第一に、言うまでもなくこの問題は「待ったなし」の緊急を要する課題だからだ。「このままだと、いずれ地球地図を描き直さなくてはならなくなるだろう。」2004年のベルリン会議で英国科学顧問のデイビッド・キング氏が警告したように、ここ10年で地球環境は悪化の一途をたどっている。たとえば、南極大陸では海上に張り出している氷棚の崩壊がかつてない速さで進行している。NASAの地球観測衛星テラは、1995年には最北部1300平方キロメートル(沖縄とほぼ同じ面積)が流出し、2002年にはその南部の部分3250平方キロメートル(東京の1.5倍)がわずか35日間で流失するのを観測した2。46億年の地球の歴史を1年間に凝縮した「地球カレンダー」を作ると、産業革命が起こった12月31日23時59分58秒から、わずか2秒たらずで地球環境は激変しはじめた事になる。第二に、地球温暖化問題が他の環境問題と密接に関連しているためである。気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change:IPCC)第4次報告書は、干ばつ、黄砂、熱波やハリケーンなどの異常気象3、洪水、砂漠化4、生態系の変化、このどれもが地球温暖化によってもたらされ、今後さらに深刻な影響が懸念されていると報告している5。また、森林伐採6は温暖化の促進につながるとして、昨年12月に開催された第13回国連気候変動枠組み条約締約国会議(The thirteenth meeting of theConference of the Parties:COP13)において地球温暖化問題の一環として、その枠組みの中で話し合われた。従って、地球温暖化の改善に取り組むことは、延いては多岐にわた5782NASA“SupportingEarthSystemScience2006”20063 2003年夏、欧州で熱波が発生した。パリでは、これまで8月の最高温度の平均は24℃であったが、同年8月12日に40℃を記録した。このためフランスでは、約1500人に上る死亡者が発生したといわれる。この熱波に呼応するかのようにして米、葡、西、カナダ、シベリアで大規模な森林火災が発生。ポルトガルの場合,全森林の約8%にも上る森林が消失し、過去20年間で最大の山火事となった。4 国連環境計画(UNEP)によると、砂漠化の要因は、さまざまであるが、気候変動も大きな一因である。現在、全陸地の4分の1が砂漠化し、放牧地の73%を劣化、世界の約6分の1の人口に影響を与えている。現在も毎年、240億トンの表面土壌が失われており、これは過去20年間におけるアメリカの全農地に相当する量であり、この被害で失われる生産量は、世界全体で毎年400億ドル以上に相当する。5 IPCC“Intergovernmental Panel on Climate Change Fourth Assessment Report-Climate Change 2007: SynthesisReport-”20076 一万年前は62億ヘクタールにわたって地球を覆っていた森林は、現在40億ヘクタールに縮小。2000年から2005年の6年間で、毎年732万ヘクタールの割合で減少し、その割合は年々上昇傾向にある