ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

際社会が一丸となって環境問題に取り組む点においては意義深いが、実効性は低いことになる。次に、現在交渉が進むポスト京都議定書も検証するが、結果は、各国の主張の食い違いから一つのシナリオを想定することが困難であった。では、ポスト京都議定書を最も望ましい枠組みである「シナリオA」に近づけるためには何が必要なのだろうか。第Ⅲ章では、「シナリオA」に限りなく近い枠組みを形成するために、国連が担うべき役割は何かを考察する。まずは、問題の所在を明らかにしなくてはいけない。そこで、シナリオAを支持しないアメリカ・中国・インドの主張を検証する。この結果、1経済活動への負担、2技術不足、3資金不足、の3点が問題であることがわかった。本章では、この3つの問題を国連、特に国連気候変動枠組み約事務局(United Nations FrameworkConvention on Climate Change:UNFCCC)がいかに解決し、米・中・印に「シナリオA」を納得させるかを考える。最後の第Ⅳ章は、以上の考察の結論とする。6つのシナリオをもとに、京都議定書・ポスト京都議定書、そして国連の役割を検証すると、1京都議定書は実効性があるとは言い難く、2ポスト京都議定書も各国の主張の違いから実効性ある枠組み形成が危ぶまれる、3実効性ある枠組み形成のためには、反対している米・中・印の主張を調整する必要がある、4そこで国連には三国の懸念材料を軽減し、交渉を円滑に進めるための「基盤づくり」をする役割が望まれる。「地球温暖化」というかつてない危機に直面している今、私たちは「シナリオA」への道を進むことができるのだろうか。ひとえに国連が強固な調整能力を果たし、有効な具体策につなげることにかかっているといっても過言ではない。今、国連の真価が問われているように思う。576