ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

独自に行われている。たとえば、気候変動枠組み条約はドイツのボンにあり、生物多様性条約の事務局はカナダのモントリオールにあるといった具合である。このように、事務局がばらばらでは各国政府が会合に常に代表を派遣することに困難が伴い、特に発展途上国では深刻な問題である。総合的アプローチから支援できる国連機関の設置が望まれる。第二に、国際的合意事項を具体的に展開していくには、中央政府組織以外の地方政府やNGOなどの非政府組織の活動が重要になることである。なぜなら、温暖化対策は、地域住民のライフスタイルに関わっており、ローカル・レベルでの住民参加を前提とした政策が求められるからである。特に、環境に負荷のかからない持続性のある開発はローカルな性格が強いので地方政府の役割は重要である。しかし、市民に一番近い環境政策を担う地方政府が頻繁に国際会議に出席できるわけではなく、そのギャップを埋めていくのが、国境を越えた活動を行うNGOやビジネス・産業界であろう。ローカルな活動とグローバルな活動とを結ぶ役割を担う活動は、今後ますます重要性を増すであろう。そして、第三に、地球環境問題の重要性が増加しているにもかかわらず、国連環境計画(UNEP)の能力がそれに十分に追いついていないことである。国連環境計画(UNEP)は、専門職員が300名しかおらず、しかも、世界銀行やWTO事務局を含む国際機関も地球環境問題を取り扱い、それを強化していることから、優秀な専門家は他の機関に移る傾向にある。また、最大の弱点として財政事情の問題がある。予算の拠出がプログラム単位の自発的拠出になっているため、予算利用の柔軟性にかける面があるからである。世界銀行や地球環境ファシリティ(GEF)からの財政支援はあるものの限られたものとなっている。そこで、国連環境計画(UNEP)を国連専門機関に格上げして規則的予算配分を可能にし、他の専門機関との活動を調整できるよう機能を強化することが不可欠である。おわりに現在、京都議定書の枠組みのもとで、各国が野心的な数値目標をコミットできないのは、国々がどのようにして温室効果ガスを削減したらよいか、わからず自信がないからである。572