ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

の懸念を深刻化させることなく、短期的排出削減を促進させる妥当な範囲に収まるであろう。現在、欧州の排出権価格は、1トン当たり13ユーロ前後で推移しており、この価格シグナルで少なくとも、欧米では省エネルギーや天燃ガスへの燃料転換などの低コストなオプションが促進されていくであろう。低価格といっても、極端に暴落していくことは考えられない。また、こうしたメカニズムは、市場設計において国際的な刷り合わせの調整時間とコストがかからず効率的である。価格交渉であれば、市場設計は、各国で異なる設計でよく、国が国内の排出権市場を管理していけばよいだけである。(2)技術開発によりCO2排出を削減していく条約グループ排出権市場は、短期的排出削減には役立つが、長期的に温暖化を防止するには、技術開発が不可欠である。そこで、このグループでは長期的に「CO2をゼロにする」目標を掲げて、政策決定者や産業界に長期的な技術変化に向けた努力を促す。究極の目標は、達成することは難しいが、ゼロ目標は、コンセプトがわかりやすく長期的目標として機能するであろう。ここでは、条約の原則は、具体的な合意を含むが、技術的政策の拘束的合意は、各国の国内政策の介入の度合いが強いのでとらないことにする。したがって、非拘束的なプレッジ・アンド・レビュー方式から開始される可能性が高い。このシステムでは、各国は自国の排出源を特定し、さらに長期的な排出削減のシナリオと短期的な解決が難しい理由を示す。さらに、技術開発への支出、開発途上国への技術援助、普及プログラムなどを各国がコミットメントする。さらに、セクター別にコミットメントする。この条約は世界規模の大きな枠組みであるが、これにより正統性を付与されれば、地域、二国間レベルでも協力が促進されて技術開発が行われる。技術開発に関する地域条約は、すでに存在する。たとえば、国際エネルギー機関が主導する実施協定や、米国の炭素回収貯蓄技術開発に関する協定、EUの再生可能エネルギー連合などであるが、こうした取り組みは各地域の状況に対応したものとなっている。もちろん、こうした取り組みは、多様であったほうがよく、世界のすべての国々が同時に取り組むべき必要はない。各国や各地域で独自性を発揮できる開発が進めば、それが結果的に世界で利用可能になる可能性は高いからである。このよ566