ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

第24回最優秀賞(1)排出権市場を構成する条約グループ(2)技術開発によりCO2排出を削減していく条約グループ(3)経済開発を持続させ気候に配慮していく条約グループ以上3つの条約でのポイントは、排出権取引、技術開発、途上国との国際協力であるが、これらのポイントは、これまでの気候変動枠組み条約のもとで、すべての機能が想定されており、現実的には敵対的な関係により実効性に乏しかった。そこで、上記に示した3つの条約シナリオは気候変動枠組み条約から独立させ、現在の気候変動枠組み条約は、以上の3つのグループに情報交換の場を提供し、最貧国に対象を絞って資金メカニズムを維持し、国家間の政治的な意見表明や意見交換の場として機能を限定していくことにする。それでは、3つのグループを具体的にみていこう。(1)排出権市場を構成する条約グループこのグループは、排出割当てについて国際的に合意することなく、先進国が独自にキャッチ・アンド・トレードシステムを作ることから開始される。EUは、2005年から大規模固定排出源を対象にして排出権取引制度を導入しており、同様に米国でも国内で排出権取引を実施する見込みがある。このように、各地で排出権市場が独立に京都議定書とは関係なく形成されていく条約グループを想定する。このような状況で国際協調や経済効率性において実現可能であるかという疑問も想定されるが、現在の割当て方式よりも市場メカニズムにより、排出権市場が成長していく可能性は高い。たとえば、欧州と米国で異なる市場ができ、両市場が異なる価格が成立しても、低い価格が成立している国は、価格を高く設定するような圧力を感じる。このため、国ごとに価格が異なっていても価格を均衡にする力が働く。たとえば、欧州の価格が35ドルで米国の価格が20ドルであれば、米国政府は、割当てを削減したりするなど市場に介入して価格を上げるであろう。また、世界的に価格が暴落しても、各国は協調して市場に介入するであろう。こうした場合に、欧州と米国は共同して価格をコントロールするであろう。この仕組みは、G8の為替相場管理に類似しているが、こうした価格シグナルを通じたコントロールによるメカニズムは、国際競争上565