ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

第24回最優秀賞暖化という問題が浮上して、京都議定書によるCO2削減が突如生じかねない状況に直面し、世界の市民は「何をすればよいのか」わからないまま、漫然と時間がすぎてしまったのではないか。地球温暖化の原因は、元来、世界の企業や市民を含めた一人ひとりがCO2の排出源である。そこで、世界各地で地域合意(ローカルアジェンダ)が積み上げられ、世界のあらゆる層で活動を開始しなければ実効性は担保されない。確かに、地球温暖化問題は、国際的合意が不可欠である。しかし、国際的合意を強調しすぎるあまり、国や地域の異なる影響があり利害が錯綜して、ますます議論はまとまらず、しいては参加国の離脱を促進させかねないことになる。以上、京都議定書の構造的問題を検討してきたが、何よりも、それらの問題の背景には、京都議定書がつくる国際体制では、加盟国の「共通利益」が漠然としており、信頼関係を醸成する体制になっていないことが大きな要因としてあげられる。議定書を遵守しても、地球温暖化防止効果は限定されており、体制にただ乗りする国々があるのに義務を守り続けうることは困難であろう。また、遵守をすることで得られる国際政治のメリットも、米国が体制に批判的である以上大きなものではない。さらに、京都議定書は衡平性を欠くルールであり、政治的な南北問題を議定書に盛り込んでしまった。今後も、衡平性の問題は蒸し返され、国際間の信頼関係は保たれないであろう。こうしたことから、京都議定書ルールは、その存続が懸念されている状況である。もっと現実的な側面から各国が共通に国際協力できる体制が必要になっている。2.複数の条約による国際的枠組みアプローチそれでは、今後国際社会での持続可能性のある国際的枠組みを構築するには、どうすればよいのか。そのためには、締結国の行動を制約するよりは、むしろ締結国がそこに「共通利益」を見出して積極的に参加する場を提供しなければならない。ところが、京都議定書では、交渉において複数の問題を同時に追及することで、一つの問題で譲歩したら別の問題でアドバンテージを獲得する、「パッケージ・ディール」の手法をとっていた。これは、563