ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

ページ
563/1096

このページは 佐藤栄作 受賞論文集 の電子ブックに掲載されている563ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

概要

佐藤栄作 受賞論文集

第24回最優秀賞的ゲームになることである。地球環境は、地球規模の公共財であるが、京都議定書の交渉方式では、公共財供給の費用負担の衡平性が解決されない。公共財供給の費用負担の本質的問題は世界政府が存在しないことであるが、そのような組織が存在しないため地球環境保護の責務を衡平に分担し利益を享受できる仕組みを各国が協力して考えていかなければならない。しかし、実際の京都議定書方式では、自国・他国の数値目標をめぐり外交ゲームを行っている。なるべく、負担は他国に押し付け、自国の負担が実質的に軽減できるような交渉を進めることが交渉担当者の能力となり、技術的削減ポテンシャルやエネルギー需給構造などとは無関係に政治的数値目標が合意されることになる。さらに、せっかく京都議定書で用意した経済的手段も、「ホット・エアー」の存在により、削減努力を順次強化していく「ラチェット効果」を前提にした枠組条約実現が困難になっている。削減ポテンシャルの要素を無視した政治的合意を何度も繰り返す条約構造では、「持続可能性」のある国際的取り決めとは言えない。一方、外交ゲームの中では自国の評価に関する情報開示は明らかに戦術的に不利となるためのすべての国々がその情報を隠すことが合理的となってしまう。EUのように率先して数値目標を世界に提案しているが、その数値が自国の削減ポテンシャルに比較してどの程度深堀したものであるか、その費用をどの程度見込んだものであるかは全く明らかでない。また、京都議定書を前提とした交渉を継続するのであれば、発展途上国が成長の権利を主張して追加的負担(GHG削減義務)を免除されることは、京都議定書の枠組みではむしろ問題解決を妨げてしまうものとなってしまう。こうした観点から、「持続可能性」のある枠組みとは言えない。(3)京都議定書では、各国の負担は衡平性を欠いているそして第三に、各国の負担は衡平でないことである。たとえば、日本は主要エネルギーを海上輸送に依存しているため他国よりもエネルギー効率向上が求められている。1トンのCO2を削減するのに欧米の1.3~2倍のコストが必要であるが、日本はGDP一単位当たりで米国の三分の一、ドイツの六割のエネルギーしか使用していない。この結果、日本は一人当たりCO2排出量も先進国の中で少ない。1998年の日本のCO2の排出量は、年間561