ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

第24回最優秀賞地球温暖化対策をめぐる複数の条約によるアプローチと国連の役割澤田公徳はじめに国連は、これまで環境問題について、国際世論を喚起し環境をめぐる条約や組織の制度化を推進し、重要な役割を果たしてきた。しかし、このような環境問題に対する国際的な政治的意思が1990年代半ば以降、米国の温暖化防止京都議定書署名の撤回により大きく揺らぎはじめた。京都議定書の発効は、先進国に対して法的拘束力のある温室効果ガス削減目標を設定するなど歴史的評価を上げ、地球規模の温暖化防止枠組みの発展に向けた重要な第一歩であったが、この議定書は、当初想定されていたものとは大きく様相が異なってしまった。米国が離脱し今のところ復帰の可能性は見られない。2013年以降(第二拘束期間)の数値目標をめぐる交渉を見ても、その負担のあり方をめぐり先進国と発展途上国とで大きな対立が生じている。現在も、京都議定書の細部をめぐる交渉が継続しているが、このまま京都議定書の枠組みを変更せずに数値目標の更新交渉をはじめても、手詰まりとなり失敗に終わる可能性すらある。ゆえに、今後の交渉で生じる問題点を特定して、その克服のための新たな枠組みの課題を明確にする必要がある。地球温暖化問題は、紆余曲折をたどりながらも、国際的な排出削減の方策について合意が進んでいるかのように見えるが、多くの問題を抱えているのである。1.解体の危機をはらむ京都議定書ルールの構造的問題地球温暖化問題は、一国だけではなく地球規模で温暖化の影響が及ぶため世界全体での取り組みが不可欠であり、問題に対処する方法として採用されてきたのが、「枠組条約」による合意手法である。それはまず、問題の所在を各国が共通に認識し対応策をとるべき559