ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

ページ
549/1096

このページは 佐藤栄作 受賞論文集 の電子ブックに掲載されている549ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

概要

佐藤栄作 受賞論文集

第23回佳作態にある都市では、交通渋滞に代表されるような、膨大なエネルギーロスといったデメリットがより強調されることになってしまっている。さらに、地域やコミュニティー意識の薄い都市住民には、他者の存在や地域への貢献といった共生感覚が乏しくなり、自己中心的な欲望の追求と無責任な浪費や廃棄が行われやすくなっている。いずれの場合にせよ、人が移動し社会が変化する中、従来の既得権益の維持と公共が無計画に提供するサービスへの過度の依存が、各種の弊害の背景にある。世の中の姿は日々変化し、それに合わせて柔軟に対応できる体制と、新たな技術・ノウハウを獲得し、敢然と現実と向き合うことがこれからの大いなる課題ということができよう。四章世界的人口移動の時代と地球環境四-一地球温暖化と人口移動世界に目を向けた場合、現在の先進国の人口は縮小に向かい、途上国の人口増加は続く。トータルでは、世界人口は増え続け、今世紀半ばには90億に迫る。またその頃にはアジアの人口が、世界人口の半数を超えると予測されている。宗教においてもイスラム教徒が最大となる予測がある。世界は大きく動いている。一方で、現在と同じように少数の国家に富が集中し、この先もさらに経済格差が拡大する場合、人口移動圧力は更に高まることだろう。すでに始まりつつ地球温暖化は、気象を大幅に変えて水と農産物供給のコントロールをさらに難しくしてゆく。生命維持のための、人口の移動も大幅に増える可能性が大きい。移民はかなりの確率で都市に移住するので、それに対する備えをしておく必要がある。この先の気象変動に伴う人口移動の活発化を控えて、エネルギー消費や責任ある生活を実現するための共生の精神を育むための都市のありかたを研究、実験してノウハウを蓄積しておく必要性がある。特に、異なった人種や宗教、歴史的背景をもったものが共同で生活をすることへの備えは難題ともいえる。歴史上の悲惨な衝突を繰り返さないことはもちろんだか、これまでに見たように、永続する(耐用時間の長い)環境問題の解決策立案のため547