ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

ページ
546/1096

このページは 佐藤栄作 受賞論文集 の電子ブックに掲載されている546ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

概要

佐藤栄作 受賞論文集

二-二人々が追いすぎたこと一方で、人々の権利と尊厳保持の行動の過程では、常に自然環境の利用や改変が行われ続ける。食料の採集、捕食、生育(保護)、農業(開墾・改質)、調理、加工・反応(工業生産)、居住、表現(文化)、延命(医療)などの行為がそれにあたる。そして、私たちが考える健康な生活を送り、自らの考えに基づいて行動し、営みを子孫に受け継いでゆく。しかし、過度の自然環境の利用、改変が続き無視できないレベルに到達し生き詰まりつつあるのが、地球環境問題のもう一つの姿である。皮肉なことに、主権在民の社会では、主権者である一般の人々に対して、警告し改善を促す声は非常に弱い。必要性を認識していても、有権者に新たな義務や抑制を課して、自らの議席を失う代議士は稀で、大量消費の主役に逆い市場から追い出されることを願う企業もない。その一つの証拠として、平成十八年版環境白書によれば、平成十六年度(2004年)の国内における温室効果ガスの排出量は、産業部門が減少傾向(1990年比3.4%減)にあるのに対して、家庭部門と自動車を含む運輸部門は1990年比でそれぞれ、31.5%・20.3%増加している。(2007年1月15日付日本経新聞によれば、90年比の温暖化ガス排出量は、家庭部門38%増、運輸部門18%増となっている。)しかも、CDMへの過度の期待からか、日本政府は京都議定書の約束を大幅に下回る90年比マイナス0.6%目標を掲げ、家庭・運輸ともそれぞれ6.0%・15.1%増を目標としている状態である。また、企業においても、家庭の生活時間に合わせて、小売では24時間営業を常態化させ、自動車では車両1tあたりの燃費を向上させつつ、重量を増した快適な車体を世に送り出している。消費者のため、従業員のため、株主のために上限なき資源の利用・改変を余儀なくされている。民主主義を否定するわけではないが、生存のための最低限の要求が更に上を目指す要求に変質し、その要求を超えた最大限の満足を与える続けることが地球環境問題へとつながっている。天然資源の無秩序な搾取と、それの廃棄物などの副産物への無責任が、現在の環境問題の根源にあることも間違いないという認識が必要である。殊に、地球規模でのシステムの破壊においては、被害の観測と原因の特定が非常に困難であり、この欲望の連544