ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

第22回佳作した」12と評価している。核拡散防止の今後と日本PSIは法律的には、特に公海上での阻止、臨検の面で海洋法との抵触に繋がるとの指摘もある。また、自衛権の解釈、適用も検討されている。その範疇において、2004年4月の国連安保理事会において全会一致で採択された安保理決議1540号は13、対象を非国家団体としつつも、PSIに一定の法的根拠を与えたものとして注目に値するであろう。同決議は、核兵器や生物、化学兵器などの大量破壊兵器をテロ組織が入手するのを防ぐため、国連加盟国に国内法整備などを義務付けたものである。決議不履行国に対する罰則や制裁は謳われていないが、国連憲章第7条に基づいていることから、状況に応じて何らかの「強制的措置」が執られる可能性を留保したと考えられる。PSIは大量破壊兵器の拡散に歯止めをかけるある一定の効果を確実にあげてきている。それは「(PSI)は組織ではなく行動である」と標榜していることからも明らかなように、「具体的に動く」ということを主軸としているからだと理解できよう。したがって、わが国もPSI参加国という立場にある以上、PSIを有効に機能させていく為に各国と共同歩調を取れるような、憲法改正をも視野に入れた法改正をはじめとするその他の整備を早急に進めていく必要があろう。一方、世界最大の核拡散防止条約であるNPTにおいては、立法時点から垂直拡散よりも水平拡散、すなわち核軍縮よりも核拡散に重点を置き、その目的を「締約国の増加による条約の普遍化」としていた。したがって、脱退や違法行為は条約の想定外であったのだが、この姿勢が条約発効から約30年後、逆手に取られることとなった。すなわちNPT第10条において脱退に関する項目は設けているが、その記述は簡潔なものに留まり、条約の違反行為に対する制裁についての規定は見当たらない。しかし、2003年の北朝鮮NPT脱退宣言及び2005年3月の核保有宣言は、締約国が容易に核兵器国に成り得る危険性を見せつけ、条約の空文化とNPT体制への挑戦を現出さ12ケネス・キノネス「ブッシュ大統領の対北朝鮮軍事オプション」『世界週報』(2003年9月2日号)7-8ページ。13 United Nations, Security Council, S/res/1540, April 28 2004.473