ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

理決議1373号が満場一致で採択された。同決議は国連加盟国全てに適用される法的拘束力のある義務を確立し、国際テロリストとその組織、そして彼らを支持する者に対処する新たな国際的活動の核心を構成している。5現在各国はこれに従って国内法整備を進めており、わが国においては「公衆等脅迫目的の犯罪行為のための資金の提供等の処罰に関する法律」として、2002年6月に公布されている。第3は、テログループが大量破壊兵器を持つ危険性の認識が高まるにつれ、国際社会全体において、核のみならず大量破壊兵器の拡散を防止しようという意識が冷戦期よりもコンセンサスとして大きく形成されてきたことである。もちろん冷戦期においても「人間の尊厳に基づく普遍的概念」として大量破壊兵器などの禁止は追及されてはいたが、例えば、化学兵器を例に出せば明らかなように、これについては禁止条約の作成というところまでのコンセンサスを形成することは近年までできなかった。実際、化学兵器は農薬の混合によって作ることが可能であり、「貧者の核爆弾」とも呼称され、早急に規制すべき対象と古くから認識されていた。それでも1925年の交渉開始以来、1997年という半世紀以上の経過を見なければ、化学兵器禁止条約(CWC)は締結されなかったのである。それはこの禁止条約が、生活や医療・衛生の発展と密接に関係するその国の化学実験をも封印しかねないと考えられていたからである。核と違って化学は大学や研究所などで、広く一般に研究され、また活用されているものである。しかし、冷戦後におけるテログループの活発化とその危険性は、そういった概念までも払拭し、安全保障上の観点から早期の締結が必要とのコンセンサスまで導いたと考えられる。そして第4は、枠組み対応型から個別対応型に変化してきていることである。つまり、冷戦期における武器や技術の輸出禁止体制は、枠組み単位によって構成されていたといえる。例えば、COCOM(対共産圏輸出統制委員会)は、共産圏がその対象であったし、武器の輸出入は東西両陣営の中でのみ行われる取引がそのほとんどであった。ところが、今日ではその輸出規制対象国及び地域を明確には設定せず、その時々で個別に対応することとしている。また、武器輸入にしても、マレーシアなどは、米国製のF/4685 United Nations Security Council,“Resolution 1373”, September 28, 2001.