ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

と考え、また一方で「政治的に核を利用しよう」と核開発を企てる国も同時に生じてきたのであった。北朝鮮はまさにこの後者にあてはまるものと言えるであろう。第2はロシアを起因とするものである。もっと正確に言うのであればソ連の崩壊である。ソ連の崩壊は、1核物質の流出、2原子力科学者及び技術者の第3国への国外流出、を引き起こした点で明らかに核拡散に弾みをつけた。特に科学者などの第3国流出は極めて厄介である。何故なら、核物質などの「モノ」の流出に関しては、その流出した個数以上の核兵器を作られることは無い以上、その流出量に応じた脅威でしかないが、科学者などの流出は製造能力の流出であるため、一定の制約を受けない数の核製造が懸念されるからである。更には、その保有するノウハウは、核物質の量に対する懸念だけではなく、核兵器技術そのものの水準を引き上げることにも繋がるという新たな懸念も生み出すであろう。第3は、今日の核拡散で深刻なのは国レベルでの拡散のみならず、テログループ向けの拡散におよんできているところである。国際社会を見渡せば明らかように、9.11同時多発テロ以降、テログループの動きは活発化するとともに、闇市場での核の入手を強く模索している。とはいえ、実際、兵器級の核物質を生産するのは容易なことでは無く、テログループが核兵器をゼロから開発できる可能性は極めて低い。だが一方で核保有国から核兵器や核物質を入手する可能性は、前述した第2の理由などにより極めて高い。この論理に従えば、テログループが核を手に入れる危険は「テロ支援国家の核武装化」と密接な関係があると言えるであろう。つまり冷戦期に国際社会が心配していたのは、核を開発した国が核兵器を使用することであったが、現在直面している危険は、テロ支援国家が核を保有することに加え、さらに同国家が核ミサイルまたは核物質の一部をテログループに売却することだと言える。テログループへの核拡散は、1国家単位での拡散と異なって、テログループの居場所を特定するのが極めて困難、また特定できたとしても核使用を抑止するための「威嚇」ができない、2したがって、テログループが核を使用するリスクは高く、3核使用によって国家側が受ける不利益は莫大なものである故、仮にテログループからの核の威嚇を受けた場466