ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

第22回優秀賞しない方針」をとってきた。しかしHEUが露見すると、IAEA理事会の核問題安保理付託に賛同し、石油供給の一時停止、高官対話においての苦情、北朝鮮による兵器緊急供与要請を断るなど圧力を強めた。中国は、経済的・政治的に北朝鮮への影響力は大きいが、調停者としてのイメージは大事にしつつも議長役に徹する姿勢が窺われる。それでも北朝鮮の核開発に対しては潜在的に脅威を覚えることは間違いなく、現時点では北朝鮮がもしも核実験を行った場合には安保理制裁決議にも賛同するような感触を米側に与えている。他方、中国にとっても、現状の膠着化は有利に働いている。なぜならば、経済制裁が引き起こすことが予想される北朝鮮の政権のたがが弱くなって体制崩壊するハードランディング・シナリオも、戦争の勃発や、北の過激化も望ましくないからである。中国にとって、北朝鮮が緩衝地帯として存在する利益も依然ある。中国が経済制裁に反対してきたことの理由には、戦争勃発、北の政権崩壊による国境の不安定化などの危険に加えて、政治的・経済的影響力を持つ北朝鮮への力を自らのコントロールの範囲内に保持しておきたいという思惑もはずせないだろう。第三章論点分析本章では、論点を設定した上でそれぞれ検証し、北朝鮮核問題の今後の帰趨、今後の政策可能性に寄与する論考を示したい。ここで提示される問いは、1北朝鮮はなぜHEUを開発したのか、2北朝鮮の核開発の意図はどこにあり、妥協可能性はあるか、3北朝鮮核問題に対し、アメリカにはどのような政策ビジョンがあるのか、という3点である。(1)北朝鮮はなぜHEUを開発したのか北朝鮮がなぜHEUを開発したのかを考える前には、未だ公式には論争の対象である、北朝鮮が本当にHEU開発を行っていたか否かを考えなければならないだろう。具体的な証拠は、パキスタンのカーン博士の技術供与証言、ファン・ジャンヨブ(韓国に亡命)の証言、遠心分離器材料購入の動きなどである。このうち、証言以外の物的証拠は遠心分離器材料(アルミ管)購入の領収書である。このアルミ管に関しては、通常の砲弾の原材料449