ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

備が問題である。冷戦期は、大国政治に規定された軍備管理・軍縮のための条約が核の拡散を防ぐために役立ってきた。具体的な核拡散の防止策としては、米ソ陣営の対立を反映したそれぞれの武器管理体制があった。しかし、相手陣営に対する恐怖感と対抗心から、陣営内で相当程度、核物質(HEUなど)の移転・拡散が進んできたことも注目しなければならない。その一方、陣営内でも核に関して差別的取扱いが生じ、非核保有国は核保有国の大国の傘下に甘んじざるを得なかった。NPT条約は、現実の力関係と既成事実を形成した五カ国の利益を優先したものではあっても、唯一有効な解決策であると思われてきたのである。ところが、原子力発電市場で米ソの独占が崩れ、核の拡散が始まった。第三世界を中心とする核保有への興味関心も高まり、インド・パキスタンなどの核敷居国、そしてアジア・南米など、多くの国が核保有のオプションを内密に検討してきたことも確かである。したがって本稿では、核拡散防止に対する各国の協調を生み出し、さらに核保有の「ドミノ現象」を防ぐためにはいかなる解決策が望ましいのかを、国際政治の観点から分析したい。そして、未解決の北朝鮮の核問題を例に取り、各国の協力のどこに問題があるのか、どこに解決への鍵があるかを示したいと思う。第一章核不拡散に向けた現状(1)冷戦後の核拡散の実情冷戦後、フランスと中国が相次いでNPTに加盟し、NPTが名実ともに国際化され、より普遍的なものとなった。東西対立の構図が解消したことで、より普遍的な核管理の体制が意味を持ちえるようになった。ブラジル・アルゼンチンなど、核保有を検討してきた国々が加盟したことも、核抑止からの脱却という希望を示しているかに思えた。そもそも、自らの国家安全保障が危険にさらされていない場合に、核を保有する必然性はあまりない。むしろ、自国が核武装することで、非核保有国の隣国が核オプションを検討するという逆効果さえも生み出しかねない。テロや小規模紛争地域などへの備えは通常440